映画の感想などなど

自分が観た映画の思ったまんまの感想。

search/サーチ

『search/サーチ』

原題:searching

主演:ジョン・チョー

監督:アニーシュ・チャガンティ

公開:2018年

製作国:アメリカ合衆国

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映画の表現方法って実に多彩だ。「ブレアウィッチプロジェクト」のようなホームカメラ風、実写を敢えてアニメ調に加工する、あるいはその逆、定点カメラ。個人的にお気に入りはこのブログで最初に紹介した全編車内映像のみの「オンザハイウェイ」。日本ではワンカットの長回しで映画界の話題をかっさらってった「カメラを止めるな!

この手のちょっと特殊な手法で撮影された映画で面白くなる条件は、「その手法に必然性があるかどうか」。一発狙うためだけの映像トリックは、物語そのものに魅力がないと一瞬で陳腐化してしまう。

そういった意味では、この映画ほど映像に説得力を持たせることに成功してる映画はなかなか観られないと思う。

 

《映像の特徴》

日本のセンスない文字だらけのポスターみれば分かるけど、「search/サーチ』は全編PCの画面上で物語が展開される。

主人公の行動や会話も、基本的にPC上の文字や動画で全て表現される。

一部「これをPCの画面上で写す必要あるの?」ていう場面もあるにはあるけど、一応の理由付けはされてるし、後述の理由からあまり気にならない。というかこの映画においては全然アリ。

 

《物語の展開》

ストーリーとしては、ある日突然連絡が取れなくなった娘を、妻と死別した主人公が探すっていうサスペンス。事件を追ううちに父親が知らなかった娘の姿が明らかになっていく。

このストーリーがつまんなかったらどれだけ凝った映像作ってもダメなとこなんだけど、これがなかなか面白い。ミステリーとして十分。結末に多少の強引さもあるけど、そこに至るまで「日付」「天候」「画像」「文字」とか至る所に伏線張り巡らせてて、上手に纏め上げてる。

そういう意味では自然とPC上の情報を見逃さないように画面に釘付けになるこの手法の相性が凄くいい話作りだった。

今や相当な数いる韓国系アメリカ人を主人公に据えてるのは今のアメリカを示す上でもなんだか意味ありげ。政治的な事は知らんけども。

 

《画面越しであることの怖さ》

この作品の一番のポイント。16歳の娘と連絡が取れなくなった。そもそも事件性があるのかどうかもわからない。最初はとにかく連絡を取ることが一番の目的になるんだけど、その描写が実に現実的。

高校にもなると実の娘の交友関係もわからない。娘を知る人物と連絡を取りたいけど、誰に連絡取ればいいかわからない。

娘のPC上のSNSから痕跡を辿る。

フェイスブックとかインスタグラムのアカウントから探したいけどパスワードがわからん!

再設定しようとしたけど、再設定の確認メールが送られてくるヤフーメールのIDがわからん!

ヤフーメールのID取り直して...

っていう、パスワード忘れてしまった時によくあるたらい回し。これがサスペンスになると実に焦らされる。ほんっとあるあるだよねこーゆーの。

 

全て画面上で展開されるから、PCちょっとでも使ったことある人は感情移入もしやすいんじゃないかな。

 

少し前ならこの映画は成り立たなかった。

FaceTimeみたいなテレビ通話が気軽になったから、画面上に話をしている人物の顔が映る。

SNSが身近になったからこそ、個人の繋がりを表面上はわかりやすく、実際の人間関係は謎に満ちたものとして表現出来る。

この映画がやりたい事と、世間一般の色々な技術の普及が一致してる現代が、一番この映画を作るのに良い時期だったんじゃないかな。

 

一部話の展開上PCから離れるタイミングでは、カーナビの表示やケータイの通話画面に切り替わる。この辺多少強引な感もあるけど、実際映画観てるとそんなに気にならないかな。

 

アメリカ合衆国という国》

アメリカが舞台の映画でよく見る光景。子供が行方不明になったからボランティアを募ってローラー捜索をする場面。これホントに多い。

「グリーン・マイル」「プリズナーズ」「ゴーン・ガール」(これは子供ではないけど)ぱっと思い浮かんだので三つだけどまだあると思う。

というのも、多分この映画で描かれてる誘拐・失踪事件ってアメリカではありふれてる出来事なんだよな。

アメリカの年間の未成年者失踪数、80万人だそうだ。報告されていないものもあるってことを考えたらもっと多いはず。

だから日本よりボランティアで子供を探すことが日常的になってる。んで、親も普通に顔出ししてる。このアメリカ特有の感じ、合衆国の「闇」を上手いこと使った映画だな〜と思った。

日本じゃ子供を発見したおじいちゃんが暫くテレビに出ずっぱりになる位には、捜索って珍しいことだから、正直観ていて異常な感じにも見えた。

 

《まとめ》

「オンザハイウェイ」主人公を車の中だけに限定したもの、「カメラを止めるな!」は主人公たちをワンカットの中に限定したもの。この2つは登場する人物に何かしらの制限を課したもの。

それに対してこの映画は、観客が得ることのできる情報をPC画面にのみ制限したもの。観客に制限をかける珍しい映画だった。少なくとも自分は退屈には感じなかったし、面白い映画だった。

 

 

忙しすぎて文章書き終わるまでにひと月かかっちまった。