映画の感想などなど

自分が観た映画の思ったまんまの感想。

すずめの戸締り

「すずめの戸締り」

監督:新海誠

主演: 原 菜乃華

公開:2022年11月11日

制作国:日本

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《1年経ってからの感想》

感想をその映画のブーム真っ只中に書くことができない人です。だいたい映画見終わった直後にも色々と感想はあるんだけど、面白い映画ほど感想をまとめ切らない。だから公開からしばらく経ってDVDとかサブスクで出た頃にもう一度観て、心に残ったものをまとめていくひと段落が自分には必要。

本作も公開2週間後くらいに映画館で鑑賞してたんだけど、先日Netflixで解禁されたのを機に改めて視聴することで、新たに気づいたことや感じたことがあったので書いてみる。

 

新海誠の新作として》

新海誠監督作品は一応大体観てる。

以前、この監督の作品で一貫して描かれているテーマは、『人と人との距離感』・『時の移り変わりと人の心』である。っていうことを書いた。「君の名は。」の大ヒットを受けてからもそれは変わっていないと思うけれど、今作は、「東日本大地震」という大きな題材をもとにメタ的にも物事の人による捉え方や感じ方の違いをかなり意識して作られてる気がする。それについてはまたあとで。

 

 

ココからはネタバレありで。

《現実をファンタジーを使って描く》

今作の大筋はこう。

宮崎に住む高校生、岩戸すずめ。彼女が偶然から抜いてしまった要石は日本で起きる災害(神様)を鎮めるためのものだった。このままでは日本に大きな災害が起きてしまう。それを防ぐために、呪いによって椅子の姿にされてしまった「閉じ師」の宗像草太とともに全国を旅していく。

 

このストーリーラインで、前作の「天気の子」や「君の名は。」との共通項を見つけることも出来るかと思う。現代の日本を舞台としてるところも同じ。

ただ、前2作との明確な違いとしては、「東日本大地震」をはじめとして、現代の実際に起きた大きな自然災害の被災地を直接描いていること。多分どんな感想を抱く人もここが明確なポイントだと思う。

※自分は本作の神話とのつながりや細かい考察は書かない。登場人物の名前や椅子の見た目から考えられることはあるけど、もう色んな人がそーゆー考察やってると思うし自分が書いても面白くないだろーし。

元々、新海誠監督のウリに、実際にある場所の風景描写の美しさがあるけど、それで被災地を描く。監督もそれが持つ意味をよくよく考えてやったんだろうなと思う。

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↑廃墟好きとしてはたまらん。

とにかく全国の様々な風景が写実的に美しく描かれているけど、絵に関しては気になることが一つ。

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↑こいつ。

物語の鍵を握るネコのダイジンと、すずめの母の形見であり、草太が閉じ込められる椅子。この2つは明らかに他のものと描き方が違う。ダイジンは明らかにわざと平面的なアニメチックな表現をしてて、一方椅子は他のものと違ってCGで飛び跳ねる。この2つは作品をポップにして、客がとっつきやすいようにする以外にも描写に理由があるように感じたけどどうだろ?

この2つのものから何となく監督の現実とファンタジーのバランスがまた少し変わったように思う。

 

《この映画の公開時期と日本の人達の認識の仕方》

この映画の感想を書くに当たって多分避けては通れないことなので、書いてみる。誰も見てないブログであっても、配慮しなきゃならんところもあるけど、当事者ではないので正直自信はない。

 

この映画、「君の名は。」に比べると、世の中の賛否は結構分かれてるらしい。否定の理由は概ね自分の予想通り。「実際に東日本大地震に被災した人々への配慮が足りない」「身内に被災者がいる、あるいは亡くなった身近な人が居る」「このテーマで映画を作るにはまだ早すぎるんではないか」といったもの。

ここで言っておくと、自分自身は新海誠監督の作品の中で、少なくとも「君の名は。」以降の3作品の中では最も名作だと思ってる。理由は後述。

でも、否定寄りの意見には納得出来る部分、そうだよな、と思う部分も沢山ある。まずはそこから。

 

自分は被災はしていない側の人間だけど、映画館で物語冒頭の緊急地震速報の音を大音量で聞いた時は、やはり当時の異常事態が思い起こされて映画館内で軽い動悸に襲われた。多分当時の様子を知ってる多くの日本人は自分と似たような感覚になったんじゃないかな?

同時に「被災者の人これ見て大丈夫か?」ていう思いもあった。それだけ東日本大震災はこの国に住む人にとって、あまりに大きな衝撃を与えたものなんだと再認識した。

映画を観ていくうちに、監督がそれを理解した上で、もの凄く色々な面で配慮して作劇してることには気づいたので、自分は落ち着いて最後まで観たけど、やはりこれまでに比べるとあまりに繊細な題材だった。

 

当時のことを思い出すと、自分はフリーター。バイト上がりのラーメン屋のTVで知った。そこから約3日間、ほとんど寝ずにニュースを見続けた。自分自身は遠く離れた場所なのに、世の中の決定的な何かが変わってしまうような気がして眠れなかった。日本全体が悲しみと不安で覆われた3.11。

これをどう物語に落とし込むか。相当悩んだはず。東北の方々がどんな感想を持つのか、誰よりも監督が不安だったと思う。

 

そんな中で自分自身ハッとさせられたことがある。

自分は立場上子供と接する機会が多いんだけど、その子供達との会話で気づいた。公開当時、もちろん中高生たちで観に行ってる子たちも沢山いた。「面白かった〜、感動した〜」っていう感想の中で、1人の中学生の女の子が言ったこと、「すずめってなんか投げやりじゃなかった?」

この言葉の意味を、改めて視聴した今になってわかった。主人公の岩戸鈴芽のキャラクター性はある意味鑑賞する側と絶対に共感できないように出来ている。

確かに物語の中で、前半のすずめはある意味投げやり、というか達観してる部分がある。

「死ぬのは怖くない」

「生きるか死ぬかは運でしかない」

というセリフ。

これに対して映画を観てる子供たちは共感することが出来ない。このセリフは震災を経験したすずめという主人公じゃないと言えないから。

実際にあの日、目の前で起きた出来事ですずめと同じ考えを持った人は1人や2人じゃないはず。

どんなにえらい批評家だろうが、被災した人でさえ、すずめと同じような死生観に至った人がいるかもしれないことを否定することはできないはずだ。あれだけの人数が犠牲になった出来事だから。

この部分が、賛否はあれど自分は価値のある映画だと思う理由につながる。

この映画の公開は2022年。震災から10年以上がたった。今年は2024年。これから中学生になる子供達は皆当時生まれてもいない。

そして監督自身もわかっていることだと思うけど、新海誠監督作品を観る層はメインが中高生。物語の舞台が2023年、すずめは17歳。

映画館に足を運んだ中高生と殆ど同じ世代の人間が、「自分は運良く生き残っている」と思ってしまうこと、家族や友達を失った人々が数えきれない程いるという事実。これを今の若い子たちが感じることってものすごく意味があるんじゃなかろーか。

正直、震災のドキュメンタリーだったりインタビューだったりを今の中学生が自分から進んで見るのは稀だと思う。興味がない子供にしてみたら「むかしのことでしょ、関係ない」と思うかもしれない。(言い方が悪くて被災された方々には本当に申し訳ない)

 

先述のすずめの死生観に気づいた中学生は、自分に当時の様子を色々と聞いてきて、すずめの「死ぬのは怖くない。」というセリフの持つ意味にちゃんと気づくことができていた。また、自分が当時ニュース報道を見ていた時のことも真剣に興味深く聞いてくれた。その女の子にとっては、多分、ただの青春ムービーではなく何かしらの意味をもって心に残ったハズだろう。被災した方々にとっては記憶を呼び起こして辛い思いをさせるかもしれない。でも、その中学生にとっては、絶対に今じゃなければ感じることができないものがあった。そういう意味では、この映画は、2022年この時期に公開することが大切だったんだと思う。

 

《物語の終わりについて》

少年少女が観る映画は、観終わって映画館を出た時にどこか爽やかな気持ちになって欲しい。これは個人的な思い。

旅を通して様々な人と出会い大切な人の存在に気づいて「死ぬのが怖く」なったすずめ。

旅の終わりに最後に閉める扉には「行ってきます」。そして物語の最後の言葉は「おかえり」。ロードムービーとして観るとなんとも前向きで爽やか。考えてみれば、『戸締り』って、今いる場所から出ていくためにやること、そして帰る場所があるからすることなんだよな。

 

やはり新海誠作品は良い。あと芹澤がやっぱめっちゃいい奴。

 

 

今回の感想は、自分が身近な子供との話から得たかなり個人的な意見、感想なので、現実の被災者に寄り添った感想じゃないかも知れない。申し訳ない。

少しでも復興が進むことを。そして犠牲者を減らす為に災害対策や耐震工事などで働いてる「閉じ師」に感謝を。

 

るろうに剣心

るろうに剣心

監督:大友啓史
原作
和月伸宏
るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』
主演:佐藤健
公開:2012年8月25日
製作国:日本

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るろうに剣心
「京都大火編 / 伝説の最期編」
監督:大友啓史

主演:佐藤健
公開
2014年8月1日(京都大火編)
2014年9月13日(伝説の最期編)
製作国:日本

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《漫画原作の実写版の難しさ》

今更語るまでもないけど難しいよね。とりわけジャンプ漫画の実写化は本当に難しい。そんな中で数少ない成功って言えるクオリティで制作されたのがこのシリーズ。三部作の段階では全部劇場で鑑賞した。

 

コミックの実写化映画の方法論として何となく思うのが、作り方としてざっくり2種類に分けられる。

①映画の表現をコミックの表現に近づける

これはハリウッドのMCUのやり方。原作のはちゃめちゃな世界観を全力で再現する方法。そのために派手な世界観をVFX全開CG全開で作り込んでいく。

このやり方の場合、ぶっちゃけフルCGの映画と同じ。特にアベンジャーズクラスになると、映像の8割方CGだから原作の雰囲気を再現しやすい。その分原作ファンからも受け入れやすい。

とりわけアベンジャーズはこの方法論に脚本で現実世界を反映させるって離れ業をやってのけたからシビル・ウォーは別格。

 

②漫画の表現を現実的なものに置き換える

日本の映画ではコスト的にこちらにする事が多い。こちらはある程度日本の映画界で映画を作るハードルを下げる事に貢献してる。が、あまりに原作からかけ離れすぎて「これ、このタイトルでやる必要ある?」って作品になりがち。原作ファンほど反感を買いやすい。

 

 

日本の映画界は残念ながらどっちの方法でも失敗する事が多い気がする。

①をやったものの技術的にチープすぎてただのキワモノに成り果てるもの(○○の巨人とか、デビ○マンとか)、②をやるふりして実際にはアイドルの学芸会にしてタイトルだけで資金を回収しようとする映画とか...

『実写版銀魂』はその映画業界の状況そのものを全力で茶化しにいったから2作大ヒットしたけど、そう何度も使える手ではないしある意味裏技。

 

ジャンプ漫画の映画化の成功例で言えば『デスノート』は①と②の両方のバランスを上手に取った上で俳優の演技力で成立させたイメージ。メインが心理戦のサスペンスだからこれが出来たと思う。

 

で、『実写版るろ剣』はというと...②の方法論を突き詰めた結果上手くいった珍しい作品。それをジャンプお得意のバリバリバトルマンガでやってのけたことは素直に驚いた。

 

《バトル漫画の大河ドラマ化》

そもそも大友監督含めメインが『龍馬伝』から。漫画の実写化というよりは漫画原作を元にした大河ドラマと捉えるとすんなりと受け入れられる作品。原作好きな自分にしてみたら色々ツッコミ入れながら観る楽しみ方も出来たし、原作知らない人は純粋にドラマとして楽しめる。その辺りは上手いことやったな、と思う。主演の佐藤健も顔だけって思われるのは絶対イヤだったろうから本気で身体張ったアクションやってたから学芸会にもならなかったし。

原作の派手派手な服装をテイストだけ残して極力現実的な和服に落とし込んで無理のない表現にしてたし。

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流石に蒼紫様は汚くしすぎじゃね?と思ったがww

 

あとはアクション面。

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ご覧の通り原作では超ド派手な必殺技を現実的なレベルで再現をよくやったと思う。

勿論ワイヤーアクションも使ってるから実際にその技を完全に現実世界で使用可能にした、ってわけじゃないけど、それでもある程度の現実味を持たせることには成功してる。

思い出せる範囲で実写版で放った技

龍槌閃・双龍閃・龍巻閃・九頭龍閃・天翔龍閃

心の一方・背車刀・牙突(三式は無かったことにしてあげて)・陰陽撥止・回転剣舞六連・焔霊・紅蓮腕

思い浮かぶだけでこれだけの技を再現してみせたのはファンサービスとしてはなかなかに嬉しい。流石に九頭龍閃とかはだいぶ原作とは違うんだけど現実的にこんなもんだよな、ていうのを地味になりすぎないアレンジでよくやったと思う。牙突だけは...うん、ねぇ。

 

キャストについては実写化映画につきものの原作イメージと違ったりは正直あると思う。佐藤健龍馬伝のイメージから配役されたってのは納得はしてるけども。

とはいえ、あんなトンデモ漫画のイメージそのまんまで務まる俳優が日本にどのくらいいるのかって方が問題で...。剣心以外のメインの役どころに関してはこの役が務まるのは...という消去法でキャスティングしてるんだと思う。だって志々雄真実の最期の断末魔の高笑いを藤原竜也以外の俳優で出来る人居るか?って話だしね。

 

まぁ、この三部作までについては個人的には原作ファンでも十分楽しめるものだったと思う。

ただ...現在公開中の最終二部作は...どうも劇場にいくかどうかは...検討中。

この製作陣が一定のクオリティ出すだろうことはわかってるし、予告ではキャラクターのイメージを見てそこまで違和感は感じなかったんだけど...何如せん今回は『追憶編』をやるってとこがねぇ。この実写化映画と真逆のアプローチ、『実写映画の表現をアニメーションに取り入れる』という方法で唯一無二の存在感で名作となったOVAがあまりに存在感が大きすぎて絶対比較してしまう事がわかってるからなぁ。

 

観るときはOVAを思い出さずに観る事ができるか...こっちの問題ですなぁ。

東のエデン

東のエデン 劇場版I The King of Eden』
原作:神山健治
監督:神山健治
制作:Production I.G
公開:2009年11月28日
上映時間:82分


映画:東のエデン 劇場版II Paradise Lost
原作:神山健治
監督:神山健治
制作:Production I.G
公開:2010年3月13日
上映時間:92分

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《00年代》

令和になってからしばらく経ち、もうすでに2000年以降生まれの大人が存在する今に敢えてこの作品を振り返ってみる。この作品を観ると、日本にとって、00年代というものが一体どんなものだったのかわかる気がする。

 

もう10年以上前の作品なんでネタバレOKで書きます。

《簡単なあらすじ》

この作品はTVアニメ1クールとその後を描いた劇場版2つで構成されてる。

【テレビ版】

舞台は(当時の)ちょっとだけ未来の2011年。卒業旅行でアメリカのワシントンD.C.を訪れた森美咲。トラブルに巻き込まれかけていたところを全裸で記憶を失い銃とケータイだけを手にした青年、滝沢朗に出会い、彼の機転により救われて共に日本に帰ることになる。(これだけ読んだらめちゃくちゃや...)

滝沢朗と行動を共にしていくうちに、彼がセレソンゲームなるものに巻き込まれていることを知り、次第に彼の唯一の理解者となっていく。

このゲームを通して、滝沢朗は「この国の王になる」ことを依頼し、姿を消すところでテレビ版は終了となる。

 

【劇場版】

テレビ版の半年後、再び記憶を消していた滝沢朗は、前総理大臣の私生児として日本へ帰ってくることとなる。再会した森美咲やその仲間と共にセレソンゲームを支配している者を探し出し、ゲームを終了させるために滝沢朗が行動を始める。

 

 

敢えて相当ざっくりしたあらすじ。ぶっちゃけあらすじ知ってもしらなくても楽しめる作品だけど、一応重要な設定に触れておくと...

 

セレソンポルトガル語で「選ばれし者」

Mr.OUTSIDEなる謎の黒幕によって選ばれた12人の人間。セレソンになった者は「この国(日本)を正しき方向へ導く」義務を負うことになる。セレソンに選ばれた人間にはノブレス携帯が提供される。

「正しき方向」の基準はMr.OUTSIDEが独断で決めるので、一般常識的なものに限定されない。

次の条件に当てはまるセレソンはサポーターにより「的確な死」がもたらされる。

・任務を途中放棄して逃亡した場合。
・長期間ノブレス携帯を使用せず何の成果も挙げられなかった場合。
・100億円を自分のために使用し続けた場合。
・国(日本)を救う目的が果たせぬまま残金が0円になった場合。
この条件のもとにそれぞれのセレソンの行動をまとめてセレソンゲームという。

 

これだけの内容のゲームを成立させるためのアイテムが...

【ノブレス携帯】

セレソンに与えられるケータイ。最初に100億円分の電子マネーがチャージされた状態で与えられる。ジュイスという名のコンシェルジュに繋がり、彼女に願えば、物理的に可能な願いならほぼ何でも叶えてくれる。願いを実現するために必要な経費が電子マネーから差し引かれ、上で書いたルールのもとでゲームが進行されていく。

セレソンは他のプレイヤーの使用履歴を閲覧することができ、それをもとに駆け引きを行うことになる。

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まぁ、この辺の設定から物語を乱暴に説明すると、「100億やるから、それでどーしようもないところまできてしまった日本を救ってみせろ。」てな感じかな。

 

 

《この作品の面白さ》

ジャンル的には、サスペンスとかミステリーに分類されるこの作品。自分は相当に大好きな作品。好きな理由の一つがジャンルにとらわれない神山健治監督の時代の読み解きかた。この人の感性、S.A.Cもそうだけど、様々な世代のものの考え方とかをとてもフラットに捉えることができるのがホントに凄い。しかも他の人なら重く描写するような内容も作品のノリに合わせて上手に料理できる。

例えば当時はまだわりと新しいものだったニート問題。ニートたちをゴミとして切り捨てる側の立場の人間も描きながら、ニートを「搾取してきた者への新しいテロ行為」として肯定する側も描く。その頃の描き方としてはかなり新しいものだったイメージがある。

羽海野チカ先生の柔らかいキャラクターデザインも相まってめっちゃポップなタッチでなかなかに重厚な物語が描かれている。

 

また、この作品が作られた頃の技術的な特徴として、スマホがケータイとして普及し切る前の時代であること。ノブレス携帯もいわゆるガラケーの延長で描かれているんだけど、当時の技術で可能なこと、これから可能になることがいい塩梅で物語に組み込まれている。エデンシステム(作中の顔認証検索エンジン)とか、当時は実現されそうだよな、と思っていたものが今ではある程度現実のものとなっているのが今見るとかえって面白かったりする。

 

 

東のエデンの本質》

世代間の相互理解。これを意識して観ればこの作品の本質が見えてくるように思う。

主人公滝沢朗は昭和64年生まれ、いわゆるゆとり世代。就職難によりフリーターやニートで溢れ、上の世代からゴミ扱いされてると感じている世代。個人的に自分の年齢に近い世代なので気持ちがよくわかる。

一方、黒幕は団塊の世代以前の時代の人間。若者から老害と蔑まれて、年金の負担に迷惑がられる世代。

この2つの世代はどちらも悪し様に描かれがちなんだけど、この作品は他の作品とはちょっと視点が違う。

本作の若者代表の主人公は、搾取される側の積極的な行動としてニートを肯定してる。曰く、「アガリを決め込んだ大人たちのために働く必要ないよ。若者をほったらかして将来働き手が居なくなって困るのは大人たちの方だ。」これだけ見るとかなり過激な考え方。でも、消費される側の世代の人々にとっては共感してしまうところもあるんじゃないかな。

 

一方、黒幕側の老人側はというと...「じゃあどうすればよかったのか?」戦後のめちゃくちゃになった日本を必死の思いで生きてきて、ようやく次の世代へ引き継いでいこうかという時に、今度は世の中の仕組みの方が変わってしまった。今まで行ってきたことが間違いだったと言われ、『老害』という一括りにされて世間のお荷物として扱われる。

 

それぞれの想いは、個人的にはどちらも間違っては居ないと思う。まぁ、ここ数年で例の上級国民様の交通事故の報道を見てると、たしかに『アガリを決め込んだジジイ』に物申したい気分にはなるけど。

ただ、黒幕が最後に語る、「時代や国を作ってきたのは、名もなき敗者たちだ」という考えはどちらの世代にも通じることだと思う。いつの時代を必死に生きてきた敗者がいて、彼らもまたその時代を語る上で無視してはいけない人々だろう。

それこそ明治維新までは、この国の人間は自然とそれを理解して生きてきたのだと個人的に思ってる。ニートをただの塵芥として扱うのとは違うよなぁと。

 

 

また、滝沢朗のお金に対する考え方というのも、監督の物事の捉え方がよく出ていると思う。

「金の払い方は5歳のガキでも知ってんのに、貰い方は大人でも知らなかったりするんだよね。」「俺は金は払うよりもらう方が楽しいって社会の方が健全な気がするんだけどな。」

ある意味物語のきっかけとなるこの台詞。妙に考えさせられる台詞で、初見で1番印象に残っている。

 

こうした様々な物事の考え方をする登場人物たちの物語の結末は何とも心地の良い終わり方をする。

「だったら話し合おうよ」をさらっと流して終わる。お洒落で素敵な終わり方。物語に深く入り込めた人はとても清々しい気持ちで観終わることができると思う。

 

 

平成が終わり、令和という時代が3年目を迎える。もう今作の語ることも過去のものとなった。今の時期に本作を観ることには何かしら意味を持たせることが出来るんじゃないかなぁと思う。

RE:BORN

『RE:BORN』

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監督:下村勇二
脚本:佐伯紅緒
出演者:TAK∴(坂口拓)

公開:2017年8月12日
製作国:日本

 

 

 

映画を観るとき、決して駄作とか自分に合わないとかでもなく、良い作品なのに内容が上手く頭に入っていかないことがある。それは大体自分自身に何か理由があることが多い。体調が悪いとか、精神的に落ち込んでいる時とか。

自分はそういう時に、何が引っかかっているのか考えるために観る映画がいくつかある。

大抵その手の映画は穏やかなロードムービーだったりセリフ少な目の芸術寄りの作品だったりする。

 

ただ、人間生きてりゃどれだけ自分自身の状態が悪かろうと、無理矢理にでも己を奮い立たさなければいけない時もある。怒りであれ苛立ちであれどんな感情でも良いから爆発させなきゃならない時に観るタイプの映画もいくつかある。自分の場合、主にジャッキー・チェンカンフー映画がそれww本作はそんなタイプの映画の一つである。

 

 

《なにも考えない》

この映画、正直ストーリーは特になくても構わない。何も考えずに観るタイプの映画なんで。

一応、元特殊部隊の傭兵が主人公ですよ〜。特殊部隊から襲撃されるよ〜。少女を守るために闘いますよ〜。というストーリーがあるんだけど別に良い。

大事なのはアクション部分ですから。

 

芸能人リアル最強ランキングでよく名前のあがる坂口拓が襲い来る敵をバッタバッタとなぎ倒す。もう本当にそれだけ!

当たり前のように銃弾避けるし、鎌やスコップなどありものの道具で敵を倒す倒す。...劇中で確実に3桁の人間をぶっ倒してます。とにかくそれを観て気持ち良くなる映画。ホントに製作陣には申し訳ないけど、それくらいの認識で観るのが自分にとっては良いみたい。

 

《アクションについて》

日本のアクション映画って色んな面でなかなか洋画に比べると厳しい部分がある。結構な予算使った映画でもワイヤー使ってるのが見え見えな不自然なアクションだったり、漫画の実写化では大抵速回しを不自然なレベルでやって違和感バリバリの絵面になってしまったり。(銀魂はコメディだからあれで良いけど)

そんな中でこの映画、戦闘シーンに関しては「ジョン・ウィック」とか「アジョシ」とかの海外の作品にも見劣りしないクオリティである。

 

主人公はゼロレンジ・コンバットって言う軍隊格闘術を用いて闘う。この戦闘術、実在するもので、陸上自衛隊の訓練に採用されてたりする実戦的な技術なんだそうだ。実際には、銃火器の使用も想定した近接戦闘術なんだけど、創始者の稲川義貴氏が戦術アドバイザーとして参加し、劇中の大ボスでも登場する。

正直このゼロレンジ・コンバットって、骨法とか合気道とかみたいにやや胡散臭い格闘技術として扱われることもあるんだけど、劇中の描写通りの力を発揮できれば相当に強い、というかカッコいい。

ゲームのメタルギアソリッドシリーズに登場する近接戦闘術CQC同様、素手もしくはナイフ等を用いて銃火器を持った敵に対抗する技術で、劇中でもカランビットナイフっていう東南アジア発祥の小型ナイフを使って闘うんだけど、それがまたカッコいい。

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↑カランビットナイフ。丸い穴に指を通して使用したりする。

マンガやアニメの様な戦い方をするけど、それってマンガやアニメの様な動きが出来るってことだからそれはそれですごい。しかもCGなしで。他に真似のできないアクションって意味では相当にすごい。

一ヶ所最高の盛り上がり中にあった、謎のグーパンスローモーションがやたらショボくみえたのは気のせい...かな?

 

《キャスト》

この映画、制作としてはほぼ自主制作映画の小規模作品に当たるんだけど、その割にはやたらとキャストがしっかりしている。

脇役に斎藤工が居るし、刺客としていしだ壱成が瞬殺されたり(ホントに文字通り秒を数える間も無くやられる)、電話ボックスで篠田麻里子がなかなかの激しいバトルを繰り広げ(これもやはり返り討ち)、大ボスに稲川義貴氏自らギリースーツを纏ってゼロレンジコンバットを披露。

でもって、エンドロールで「やっぱりか!!」と驚いたのが劇中BGMの作曲がなんと川井憲次氏!!曲調からまさかとは思ったがなんと贅沢な事。(ghost in the shellとかの押井守作品とかガンダム00とかの作曲者です)

 

これだけでも自主制作映画としては異例のキャスティングなんだけど自分の中で最高の豪華ポイントは...

黒幕役が、我が敬愛する俳優、大塚明夫氏である!!

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↑いやカッケぇよ...ww

役柄的に明らかにビッグボスオマージュな上に、声に特殊な力が宿っている敵陣営のボス。正直言うよ、最初見た時はこれが見たくてこの映画を借りたわww

大塚明夫氏はお父さんと同じく、声優業をあくまで俳優として演じる人だから実写映画に出ても違和感ないんだよなぁ。ラスボスとして、最後は(やはり)瞬殺されて小物化しちゃうんだけど、声の圧と見た目の渋さ半端なかった...。

 

 

この映画、思いつきで書いてみたものの、ホントに細かい事考える必要ない映画。観ててカーーーっとテンション上がればそれでええです。

 

疲れてるなぁ最近...

ゴーストオブツシマと時代劇

『ゴーストオブツシマ』

『Ghost of Tsushima』

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ジャンル:アクションアドベンチャー
対応機種:PlayStation 4
開発元:Sucker Punch Productions
ディレクター
ネイト・フォックス
ジェイソン・コーネル
発売日:2020年7月17日

 

 

はい、映画の感想ブログと言いつつまたゲーム。読者が居ない以上好きに書かせてもらう。

 

《サムライ映画をゲームに》

このゲームは、サムライを主人公としたチャンバラゲーム。それだけ言うと世の中にゴマンとあるゲームの一つな感じはするんだけど、まず、前提条件として開発元が海外であるという事。なので、外国から見た日本、外国から見たサムライが描かれる。

そこで映画と繋げると思い浮かぶのがこれ。

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ラストサムライ

ご存知トムクルーズ主演の明治初頭の時代に取り残されたサムライを描いた作品。こちらの作品は、多分西南戦争とかの士族による反乱をベースに作られた物語。

この映画は大ヒットしたけど、日本の描写についてツッコミを入れる人もたくさんいて、中には結構否定的な評価を下す人もいる。個人的には、明治時代というとても好きな舞台設定だったのと、CGを使わずに合戦の様子を描いたクライマックスに関してはすごく良かったと思う。

ただ、登場人物の思想とか物語の構成についてはいかにもアメリカンな感じは確かにあった。この映画は良くも悪くも『ハリウッド映画』だと思う。日本への愛情はすごく感じた。

 

それに対して、このゲーム、「ゴーストオブツシマ』は如何なるものか...。

 

 

《ゲームというフォーマットと舞台設定》

このゲームの舞台は鎌倉時代対馬。簡単な粗筋を紹介すると...。

主人公は対馬國の武家の息子、境井仁。父を戦で失ってからは対馬國を治める地頭の叔父、志村家に引き取られ武士道精神、武士の誉れを重んじる立派な武士に成長する。

そして時は文永...。モンゴル帝国の将軍コトゥン・ハーン(フビライ・ハンのいとこ。勿論架空の人物)が率いる元軍が、日本征服のため対馬國の小茂田浜へ押し寄せてきた。

仁は対馬國を守るために武士団とともに激戦を繰り広げるが、元軍の集団戦法と最新兵器によりあえなく敗走。武士団は壊滅し、叔父の志村家当主は囚われてしまう。重傷を負った仁は女野盗のゆなに助けられ、叔父を助け出し対馬國を守るために再び立ち上がる。

 

ここまでが物語の冒頭。まぁ日本人なら誰もが知ってる文永の役、蒙古襲来が物語のベースになってることはわかる。まず、この時代を選んだことが面白い。

 

自分は職業柄、大人になってからも歴史を学び続けてる。調べるほどに感じるのは、中世以前の日本史は半分ファンタジーなんだな、てこと。平安時代まで遡ると実際に陰陽師だとか妖魔調伏の物語とかホントに御伽話が多い。時代劇で江戸時代や幕末が多いのは、資料が多く残っててイメージさせやすいってところが大きいと思う。

その点から見ると鎌倉時代ってのは一般的な武士を描いたものからするとかなり特殊。戦国武将でもなく維新志士でもなく鎌倉武士となるとだいぶ古い。

その分ゲームに落とし込む際に、多少変なところがあっても鎌倉時代ならまぁわからんよね〜、って言える絶妙な古さ。新撰組とかになると写真資料すら残ってるから創作すると絶対不自然なところでてくるしね。

 

《蒙古襲来》

時代劇をゲームにする上で、オープンワールドでチャンバラ劇を繰り広げるとなると分かりやすい敵が必要になる。

江戸時代だと平和すぎて成り立たない。戦国時代だと同じ武士同士の戦いだからゲームだと視覚的にちょっと分かりづらい。

となると元寇をモチーフにしたのはとても上手い。モンゴル帝国っていう明らかに武士とは違うわかりやすい存在が敵になるし、土地を守るっていう明確な動機づけにもなる。

対馬を舞台にしたのも大陸に近いことや史実からも自然だし。ホントの対馬は多分もっと山が多いんだろうけど、規模的にもオープンワールドとしてはちょうどいい広さ。

 

ゲームとして見ると...。

敵を倒して強力な武器を手に入れる。

元軍が用いていた火薬兵器を奪って使う。

(歴史の教科書に載ってる『てつはう』ね)

 

敵の拠点を制圧して探索範囲を広げる。

対馬に乗り込んできた元寇が野営として築いたゲル(モンゴルのテント)が敵地の目印になる。

 

などなど。ゲームとして、歴史的な資料を上手に落とし込んでる。これが江戸時代だったら色々突っ込んでしまうとこかも知れないけど、元寇だと、「こんな感じだったのかなぁ」と何となく納得できちゃう。

 

 

《武士道とは》

物語の中で主人公の仁は、模範的な武士でありたいと願うが、同時に武士の戦い方のままでは元軍に敵わないことを痛感していく。

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ほらこの教科書にも載ってるこの絵。蒙古襲来絵詞。火薬の使用と集団戦法によって、一騎討ちを基本とした正々堂々と戦うことを旨とする武士はとても苦戦しましたよ、ってやつ。

この絵今でも研究されてるんだよね。絵の一部は後世で加筆されたものだって最近わかったり。......脱線しました。

 

ゲーム中、敵と正々堂々戦いたい時はボタン一つで一騎討ちを申し込むことが出来る。如何にも武士らしく敵の攻撃に抜刀術で一刀のもとに斬り伏せる。

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ただし、ゲームを進めるとこれだけでは攻略は難しくなる。史実では、文永の役で送り込まれた元軍は約4万人。相手の方が圧倒的に兵の数が多い。そこでゲーム内でどうやって物量差に対抗するのかというと...

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↑闇討を行う仁

いわゆるステルスキル。武士の戦い方だけでなく、必要に応じてステルス要素を用いた戦い方も駆使していくようになる。

当然13世紀ごろの日本に忍者は存在しない。武士は、誇りを重んじ、正々堂々と戦うことこそが誉れである、という時代である。

そこにこういう要素を入れてるわけだけど、製作陣はよく歴史を調べて、いわゆる「NINJA」が居ないことも理解した上でやってると思う。

物語の中心となるのは、仁が武士道を貫くか否か。闇討ちを行い、手段を選ばず対馬の民を守ろうとする彼を、次第に民は『冥人(くろうど)』という二つ名で呼ぶようになり、武士とは違う希望として捉えていく。

ただし、本人は武士道に背く闇討ちを行うことに苦悩する。地頭である叔父からは非難され、武家としての立場を危うくしていく。

 

これを海外の人が作ったって凄いことやなって思う。サムライカッコイイ!だけじゃなくって日本人の武士道精神を本気で丁寧に理解しようっていう姿勢が見て取れる。

 

《時代劇をゲームに》

今作の開発陣は武士を描く、と同時に時代劇をゲームに、という意識がそうとう強い。

まず、キャラ造形。

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↑主人公 境井 仁

モデルさんには悪いけど決して美形じゃない。でもってどこから見ても日本人とわかる顔立ち。如何にも泥臭い武士っぽい顔。今のご時世、イケメンにしようと思えばいくらでも出来るのに敢えてこういう見た目にしたのは、明らかにわざと。黒澤映画のイメージ。

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海外の人の黒澤明好きって正直本国より熱狂的。ゲーム内にもわざわざ粒の粗いフィルターかけて白黒にする「Kurosawa MODE」なるものまで完備。音声までノイズを入れる徹底した作りで日本映画への愛がこれでもかってくらい詰め込まれている。

 

それでいて、風景描写などは敢えてファンタジーっぽさを残してる。対馬の気候や植生は敢えて無視。整合性よりも日本的な四季の表現を優先して全て対馬にぶち込むあたり、海外のフリーダムさを感じる。

この自由さと時代劇への愛情の絶妙なバランスでホントに独特な雰囲気の作品になっている。

 

 

《ゲームの中身は》

このブログはあくまで、映画の感想ブログの体なんで、プレイレビューはあまり書かないつもりだけど、ゲームプレイも充分楽しめた。

よく「SEKIRO」と比較されるみたいだけど、あのゲームとはそもそも狙ってるゲーム性が全然違うからあまり比較対象にならないのでは?と思ってしまう。少なくとも自分はどちらも相当に楽しめた。

 

一つだけ、ちと残念と思うのは...、これだけ史実も丹念に調べて、実在する日本の島を舞台に

オープンワールドの大作を、日本では多分作れないんだろうなぁということ。それこそ「SEKIRO」の完成度とクオリティくらいしか和ゲーに比較対象がない。パシフィック・リムを見た時と同じなんとも言えない気持ちになる。

 

折角これだけ日本を舞台に良いゲーム作ってもらったんだから、日本のゲーム会社もアメリカの西部劇をモチーフにして、馬を乗り回すオープンワールドのゲームを作ってみては...あ、R.D.Rが......

るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 追憶編

るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 追憶編」

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原作:和月伸宏
監督:古橋一浩
キャラクターデザイン:柳沢まさひで
アニメーション制作:スタジオディーン
製作:SPEビジュアルワークス
発表期間:1999年2月20日 - 9月22日
話数:全4話(全4巻)

 

《ジャンプ漫画と実写映画》

自分が小学校から中学校にかけて、最もハマっていた漫画二つ。

slam dunk」と「るろうに剣心 明治剣客浪漫譚」。

どちらも漫画、アニメ版両方何度となく見返して、当時概ね台詞を覚えてしまってるレベルでハマっていた。当然少年漫画なので、子供が読んで楽しむものだと思っていたし、るろ剣についてもジャンプ特有のバトル漫画として読んでた。

それが、現代に至って何作も作られる実写映画になるなんてとても想像してなかった。

 

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↑色々話題にもなった実写化第1作目。漫画実写化で数少ない大ヒットした成功例。牙突吊り上げ式は目をつぶろう。

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↑実写化第2・3作目。前編後編の二部作で京都編を実写化。志々雄真実役の藤原竜也は人によっちゃ否定する人いるけど、じゃあ他にどの俳優ができるの?て感じ。ちなみに瀬田宗次郎役は実写化前に予想したのが見事に的中した。

 

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↑そして公開が延期された4・5作目。再び二部作で人誅編がつくられる。

 

しかしこの『人誅編』、実写化のハードルが非常に高いから作らないだろうと思ってたけどようやったな〜。この映画、公開はまだだけど、ファンほど相当シビアに評価されると思うんだけどなぁ。

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↑雪代縁のビジュアルは結構原作に寄せててびっくりした。

今のところ実写版は全部劇場で観てるし、結構期待はしてる。

 

...どーでもいーけど、邦画のポスターのセンスのなさってどーにかならんものか...

 

《追憶編》

『人誅編』を実写化するにあたって最も高いハードルが、『人誅編』を作るなら《追憶編》を描くことは避けて通れないということだろう。

超〜〜〜今さらながら「るろうに剣心 明治剣客浪漫譚」のストーリーを簡単に辿っていくと...

 

〜かつて幕末最強と謳われた伝説の人斬り、長州派維新志士、緋村抜刀斎。幕末終盤に活躍した彼は、鳥羽伏見の戦いを最期に忽然と姿を消した。

 そして時は流れ明治11年、人斬り抜刀斎は、刀を逆刃刀に変え、不殺の誓いを立てて、全国を放浪しながら自分の罪の償い方を探するろうに(造語)の緋村剣心として人助けをしながら生きていた...。

 

うーむ、粗筋書くのって難しいww

この漫画の他と違うところと言うと、多くの漫画でスルーされる、「ヒーローなら敵を殺してもいいの?」っていう根本的な疑問を突き詰めて物語を作っているところ。なので、少年ジャンプの漫画としては珍しく、主人公が大人、物語のテーマが贖罪である。そんなところに惹かれて自分もこの漫画にどハマりしていた。

そして、この「追憶編」はその最も根幹となる「主人公の罪」に関する物語。なので...とても重い...。

ジャンプ漫画としてもかなり暗い。いわゆる「過去編だけ」で構成されているから原作を知らなければバッドエンドになる、かな?

 

ただ、このOVA版「追憶編」、クオリティで言うと、実写版のこれまでとテレビアニメ版と、下手すりゃ原作漫画も含めても、最も質の高い作品ではなかろーか。

 

 

《時代劇として観た「追憶編」》

この追憶編の構成は全四話のOVA作品として作られている。各話30分ずつ、全体で約2時間なので、ほぼほぼ映画を一本観る感覚で視聴できる。そして、原作の内容を根本は変えずに、描き方を思い切った変え方をしてバトル漫画を時代劇に丁寧に作り変えている。

 

まずは絵柄について。

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↑原作版抜刀斎。まぁ、とーぜんカッコいいですわな。

一方...

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↑「追憶編」の抜刀斎。

見ての通り、絵柄がテレビアニメ版とも原作とも全然違う。劇画というかかなりリアル路線の絵柄。

必殺技名を叫ばない、っていうのも原作とのわかりやすい違い。ただ、それとわかる必殺技は撃ってるし、人斬り時代なのでなかなかに過激な戦闘シーンはあるので苦手な人は注意。

 

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↑雪代巴。

このOVA版では、原作のように逆立った髪型や大きな瞳は描かれず、虹彩の光も必要以上に描かない。そしてシーンによっては顔の判別がし辛いくらい画面が暗かったりする。

明らかにわざと他の作品と差別化してるので、最初は結構戸惑う。

現実に近いライティングを使ってるシーンもあり、アニメ作品としてはちょっと変則的な作りをしている。

そして、風景描写には実写映像とアニメーションを組み合わせた、当時としては珍しい演出が要所要所に挟まれる。

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これが実に美しい。おそらく本当の京都、大津あたりの風景を取り入れてるんだろうと思う。一つ一つのシーンがとてもアニメとは思えない上質な映像で幕末の日本が丁寧に描かれている。

また、全四話の物語で、一話ずつ日本の四季を描いている。様々な季節のモチーフとして、鬼灯、ざくろ、菖蒲、祇園祭、秋茜、などが出てくる。

この細かい描写は、原作でも物語の鍵として出てくる『白梅香』の存在をより際立たせることに繋がってるように思う。

 

ここまでごちゃごちゃ書いたけど、本当に一つ一つを丁寧に作り上げているので、自分の中では完全に幕末時代劇として認識してる。

 

また、原作の魅力の一つだった、史実とフィクションのやり過ぎ一歩手前ギリギリのラインでの繋がり。

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桂小五郎高杉晋作

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新撰組

あまり詳しくはないんだけど、司馬遼太郎のイメージは強いのかもしれない。物語中には池田屋事件禁門の変が描かれて、動乱の世に身を投じたヒーロー達が物語に華を添える。

原作ではやっぱり少年誌だからトンデモ必殺技やちと無茶だろ、っていう展開もあったりするけど、ギリギリ原型を残す形で現実的なアレンジをしてるから、外連味と渋さのバランスがちょうどいい感じ。個人的には新撰組好きなので原作より描写が多くて嬉しい。

 

 

《十字傷》

ここから原作知らない人はあまり見ないこと。

ネタバレ映像だらーけ。

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最終話の第四幕では、剣心が人斬りを辞めるきっかけとなる出来事、当人にとっては長いこと苦しめられることになるトラウマ が描かれるわけだが......

この第四幕......全てがひたすら美しい。

 

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↑原作でも勿論相当に力の入ってるシーン。雪の降る中での雪代巴の最期。

 

OVA版.........

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これ以上画像を使うと文章で書く意味なくなるからこのくらいで。

とはいえ、このシーン含め、最期の第四幕は文章で説明するのが非常に難しい。音楽、カット割り、情景、間。全てがホントに美しい。こればっかりは観て!!と言うしかないくらいに凄い。

 

 

ちなみにこのOVA版は、原作の更に後の物語を描いた「星霜編」も作られている。

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↑こちらは主人公緋村剣心とヒロイン神谷薫の人生の結末が描かれている。...が、あまりに暗く、哀しい結末のため観るには「追憶編」以上に覚悟が必要。

 

 

今回紹介したOVA版「追憶編」。日本では非常に高い評価だったけど、原作とのあまりの雰囲気の違いに原作ファンからは一部否定的な評価もされていた。

が、この作品、海外では恐ろしく高い評価をされていて、アニメーションの枠をこえた名作として扱われてるらしい。

海外では「Samurai X」のタイトルで展開されたるろうに剣心だが、国によってはガンダムシリーズより知名度のある作品だとか。

日本の時代劇(実写含む)映画の中でも自分はベスト5に入るんじゃないかと思ってるけど、どーだろ?

 

実写版「るろうに剣心」の最終章がどのようなものになるのかまだわかんないけど、延期されてる間か、公開された後か、是非このOVA版「追憶編」を観て欲しいと思う。

...後者の方がおすすめできるかな〜?

 

 

新海誠監督の映画について

『天気の子』
『Weathering With You』
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監督:新海誠
出演者:醍醐虎汰朗・森七菜・小栗旬
主題歌:RADWIMPS
公開:2019年7月19日
製作国:日本

新海誠監督の映画》

新海誠監督との出会いは大学生の頃、たまたま新海誠初作品だとか特に知らず観た『ほしのこえ

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脚本、作画・美術・編集など、ほぼ全ての制作を一人で作った天才による作品、としか知らずに観た。その頃はアニメを監督にまで意識することはそんなになかった。

とにかくすげぇひとが世の中にいるもんだなぁ、とだけおもって...そこまで深く考えずに観た。

ただ、この作品の時点で彼の根っこにある作品テーマは今も変わってない。と思う。

 

その少し後であの作品と出会う。

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秒速5センチメートル

『5 Centimeters per Second
a chain of short stories about their distance』
公開:2007年3月3日

この映画は自分はちょっと語れない。自分の人生のあるひと部分にぴったりと重なった瞬間にみたせいで冷静な気持ちで観られなくなってしまった。それでも何度となく観てる。

この映画を観て直感的にこの作品の監督は、ひとが望む作品ではなく自分の描きたいものを一貫して作るタイプの人だと感じた。

自分の人生経験から切り取ったものを作品にするイメージ。これはこの後公開されるどの作品にも通じてるものだと思う。

 

 

 

 

《作品ごとの違い》

この人の作品、もし人に勧めるとしたら《現実に寄せた作品》と《ファンタジーよりな作品》にざっくりわけられる。それぞれざっくり紹介すると...

 

 

《現実寄り...ただし世界観が一部空想》

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『空のむこう、約束の場所』

出演者:吉岡秀隆萩原聖人
公開:2004年11月20日

新海誠作品の評価として、美術面、美しい背景がよく挙がるけど個人的にはこの作品が1番綺麗だと思う。そして吉岡秀隆萩原聖人の2人が思いの外声優として素敵。

 

《全面的に現実的》

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言の葉の庭
『The Garden of Words』
出演者:入野自由花澤香菜
公開:2013年5月31日

完全に現実世界での物語。そしてとても大人な物語。だけど紡がれる言葉は結構メルヘン(?)。

これもかなり好き。

 

《ファンタジーに全振り》

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星を追う子ども
『Children who Chase Lost Voices from Deep Below』
出演者:金元寿子入野自由
公開・2011年5月7日

これは世界観も全部完璧に異世界もの。賛否が分かれる理由に「ジブリでいいやん」と言われることがある。けど、やっぱり描かれるテーマは一貫して変わらず。自分は好き。

 

 

 

そして...世間様に1番人気の...

《現実世界の中のお伽話》

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君の名は。
『Your Name.』
出演者:神木隆之介上白石萌音
公開:2016年8月26日

これはねぇ...。やっぱりよくできてる。間違いなく名作だし、東京と飛騨の景色を美しく表現してるし、そりゃ大ヒットするわ、と思う。自分も劇場で観て、ラストシーンの『秒速5センチメートル』へのセルフオマージュも唸った。

いい映画。...なんだけどね...だけどね...すっごい複雑な気持ちなんだよね。なんだか話が良く出来過ぎてて読後感が爽やかすぎるというか...。いやでも普通世間様はこーゆーの求めるよなぁ...とか、なんとも言えない感じなんですわ。あくまで個人的に。

 

そういう意味では、『天気の子』も観ていてちょっと似た気分になった。『天気の子』も現実世界のお伽話だった。お伽話はやっぱり子供も観られるものじゃないといけない。子供が見る以上見終わった後の気分が良くなるものじゃないといけないから、ハッピーエンドが基本だと思う。だから物語としてはスッキリ出来てて良い作品だと思う...んだけどねぇ...。

 

 

 

何故こうも言葉を濁すのかと言うと、自分が新海誠作品で1番好きなのが『秒速5センチメートル』の『コスモナウト』だからである。

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秒速5センチメートル』は「桜花抄」、「コスモナウト」、そして「秒速5センチメートル」の3作からなる連作短篇アニメとして作られた。

その中で「コスモナウト」は、種子島を舞台に高校生の淡い恋心が描かれる。「桜花抄」の主人公貴樹くんに告白しようとする女子高生澄田が主人公。貴樹くんから何かを感じ取って結局告白することはできませんでした、っていう話なんだけど、その描き方が凄い。セリフにない心の内を表情でもなく、アニメでありながら間と風景で表現し切った繊細さ。わずか10分ちょっとのなかでこれだけのものを表現するって普通じゃない。新海誠作品観るとき必ずこの話が頭に浮かんでしまうんだよなぁ。

 

《一貫したテーマ》

新海誠作品で一貫して描かれているテーマは、『人と人との距離感』・『時の移り変わりと人の心』である。

秒速5センチメートル』は恐らく(勝手な予想だけど)監督自身の経験から切り取られた部分があるんじゃないだろうか。どれだけ強い想いも距離や時間が変えてしまう。誰しも考えてしまうことで寂しく感じるものだけど、実際どうしようもないもの。それを『秒速5センチメートル』のラストシーンであまりに美しく描いたもんだから脳裏に焼き付いてしまって離れない。

『空のむこう、約束の場所』や『星を追う子ども』はこのテーマが色濃く出ている。

自分は作者が表現したい強い想いとかが伝わってくる作品が好きだから、そのために必要ならバッドエンドだったり、報われない結末だとしても良いと思ってる。だからこの人の作品特有の見終わった後のなんとも言えない感じたまらなく好き。たとえ周りから「こじらせ」てるとかいわれてもww

その点で言うと、『君の名は。』で初めて、監督は観客の望むものを意識したのかな?と思う。『天気の子』も同様。『君の名は。』のラストシーンは間違いなく万人が望むエンディングだし、映画作りとしても満点!そこから評価されたから『天気の子』では予算かけてCGもふんだんに使われた綺麗な絵も作ってるし。

 

ただ、ねぇ。...やっぱり自分は良く出来過ぎてると思ってしまうんだよね...。

我ながら我儘だわ。

この監督には、いつかもう一度純粋に自分の頭の中だけで周りを一切考えずに映画作って欲しいなぁと思う、