映画の感想などなど

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シビルウォー/キャプテン・アメリカ

シビルウォー/キャプテン・アメリカ

2016年公開
監督:アンソニー・ルッソ
          ジョー・ルッソ
主演:クリス・エヴァンス
          ロバート・ダウニー・Jr.(実質)
制作:アメリカ合衆国

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☆今回はネタバレ全開で書きます☆


長々とアメコミについて書いたのでせっかくだからその中から1つ。

MCUの映画シリーズの中でも、シビル・ウォーの立ち位置はかなり重要な位置にある。でもって自分の一番のお気に入り。


あらすじ
MCUフェィズ2までの物語で、アベンジャーズは地球の危機を幾度も救ってきた。
が、同時に戦場となった地域では多くの犠牲者や建物に被害が出ており、ヒーロー達は国際社会で賛否が分かれる立場となっていた。
そんな中テロ組織の自爆攻撃を、超能力を使って阻止しようとした結果、一般市民に多数の犠牲者を出してしまう。この件により、「アベンジャーズ国際法違反の自警団ではないか」という批判を浴び、ヒーロー全体の立場が危うくなる。
常人を超えた能力者集団を国連の管理下に置く「ソコヴィア協定」が提唱され、ヒーロー達は決断を迫られる。「管理され国連の判断のもとで闘うか、自らの判断と責任で正義を貫くか」

 


解説(?)以下ネタバレ含む
まず、この映画のタイトル。
シビルウォー/キャプテン・アメリカ


原作のタイトルがそうだから、って言われればそこまでなんだけど、タイトルをよく考えたら、なんとも悲しい物語。
シビルウォー(内戦)→アメリカ国内では南北戦争を指す言葉。アメリカを代表するヒーロー同士が仲違いして闘う内戦である。
で、副題に「キャプテン・アメリカ」って入ってるけど、この映画の中でキャップは協定反対派。そして最後には仲間からも世間からも逃亡して姿を消す。体制から追い出される側が主人公。


キャプテン・アメリカ」という名の入ってる映画は3作あるけど、これがその3作目。
アメリカの自由と正義の象徴たるキャップが最後は国から追われて終わりなんだよな。


この映画は、実質アイアンマンとキャプテン・アメリカの2人が主役である。いや、勿論他のヒーローも全員に見せ場があって良くこれだけのキャラ出して上手くまとめたなーと思うよ。でも物語の主軸はやっぱりこの2人。

 


『この物語でのアイアンマンの立場』


この作品までのアイアンマンのスーツは、中の人トニー・スターク社長の心の弱さの象徴だった。
プレイボーイで億万長者で誰に対しても傲慢でイヤミな社長...という世間からの評価を隠れ蓑にしているものの、今作の時点で精神的には疲労困憊。
異世界の存在との戦闘後のPTSD不眠症、スーツへの依存症まで経験。

挙げ句の果てには己の恐怖心からウルトロンって化物まで作り出して世界を危機に陥れる大失態。


そんな中でアベンジャーズの闘いのせいで息子を亡くした母親から罵倒され、内面はボロボロ。
序盤で父親との関係を振り返る場面もあるんだけど、普段強気な発言と皮肉ばっかりのこの人...その実後悔と反省ばかりの人生なんじゃないだろーか。


だからこそ「ソコヴィア協定」に社長が賛成するのはごく自然なことだと納得出来る。自分が正しいことを行うのではなく、チェックを受けるべきだと。


これまで1番ワガママなオレオレキャラで通してきたトニー・スタークが、責任を取って本当の意味でヒーローになろうとする。
ヒーロー辞めればええやんけ、って思ってしまうけど、彼女と距離を置いてまでアイアンマンであり続けることを選んだ。
なので、この映画の中では終始辛そうな表情。皮肉は言っても今作では笑顔はほぼなかった気がする。で、さらにそこまでやっても仲間に思いは伝わらず...
一緒に戦ってきたキャップとも敵対。闘いはするんだけど、社長はあくまで止めようとしてるんだよね。
明らかに手加減してる。ヒーローとして、仲間として、間違った方向へ向かう(と思っている)キャップを正そうとするイメージ。
父の仇とわかって流石にユニビームぶっ放してたけど、最後まで「投降しろ」って呼びかけてたし。


キャップとの闘いで「バッキーは俺の親友なんだ」って言葉に対する社長の「so was I(私もそうだった)」(多分こんなニュアンス)って返事は皮肉じゃなくて本音だろうと思う。
アイアンマンことトニー・スタークにとってこの映画は「本当のヒーローとしての自覚に目覚め、力に対する責任をとる物語」だと思う。

 


『この映画においてのキャプテンアメリカの立場』


この作品までのキャプテン・アメリカのスーツはアメリカの精神「自由・平等・博愛」の象徴だった。有り体に言えば政府のプロパガンダとしての衣装である。
知ってる?原作初期の敵は第二次世界大戦の枢軸国だったそうだ。戦後は共産主義者が敵。赤狩りなんてものまでやって米国政府にとっての正義の執行人として描かれていたらしい。


そして、現代のキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースは..............一言で言うと浦島太郎である。
70年間の冷凍睡眠から目覚め、再び正義のミカタとして活躍することになるんだけど、勿論自分の昔の知人たちは皆いなくなっている。
恋人は今作で亡くなった知らせを受け、唯一の親友バッキー・バーンズは記憶を失くして前作での敵。
この人がキャプテン・アメリカになるよりも前...超人血清を打たれてスーパーヒーローになる前、ひ弱で病弱な正義感だけの青年スティーブ・ロジャースを知っている人間は視聴者以外誰もいない。


今作ではそんなキャップは一貫して、テロの首謀者として仕立て上げられてしまった「ウィンター・ソルジャー」ことバッキー・バーンズを救うために動いている。
仲間が離れ離れにならない事こそが重要だと極めて正しいことを訴えるトニー・スタークを振り切ってまで、である。
ティーブにとってはアベンジャーズでさえ、『キャプテン・アメリカ』の仲間であって、『スティーブ・ロジャース』の友人ではなかった、ということなのか...
事件の黒幕が判明してバッキーの疑いを晴らすために戦ってるんだけど、シリーズの中で初めてなりふり構わず感情に従って行動していく印象がある。
結末からいうとアベンジャーズを振り切って姿を消してキャプテン・アメリカは去っていく。


「インフィニティ・ウォー」で再び仲間とともに闘うことになるんだけど、結局アイアンマンとは再会してない。


キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースにとってこの映画は、「ヒーローとして闘い続けてきたキャップが初めてスティーブ・ロジャースとして、正義よりも個人として闘いに身を投じていく物語」である。

 

この2人のロウとカオスとしての立ち位置が、今作で逆転したような印象を受ける。事実、インフィニティ・ウォーではキャップは星条旗を捨てて無精髭生やして登場するし。


この映画、一応言っておかなきゃならんのが、全体の雰囲気としては暗い印象じゃないってこと。
新メンバーのスパイダーマンアントマンの軽口や、派手なアクションシーンだけでも、他の映画とは比べもんにならんクオリティで娯楽映画として最高に楽しめる。
初めて観たときゃ、オトナの事情をクリアして満を持してのスパイダーマン登場の瞬間はそりゃテンション上がりましたさ。
アイアンマンとキャプテンアメリカどっちの方が強いん?
ホークアイさん、この人外集団の中で弓矢だけでたたかえるん?
 とか、単純にワクワクさせられる場面がたくさんある。
空港でのヒーロー勢揃いシーンはちと感動すらした。
日本で悟空vsルフィとか実写化したとしてあんだけテンション上がる出来になるだろーか...。

 


感想
この映画、非常に面白くて見応えあるんだけど、よくよく考えたら観たくはない闘いなんだよなぁ。
シリーズで活躍してきたヒーロー同士が仲違いして潰し合っていく姿を見せつけられてバラバラになって終わり...。

しかも今回のヴィラン、というか真犯人は特殊能力を一切持たないただの元軍人。アベンジャーズに恨みを持って仲を引き裂くためだけに行動する一般人なんだよな。あれだけ活躍してきたヒーロー達が策略ハマってどんどん崩れていく様は観てて辛い。

ブラックパンサーが唯一希望ある終わり方だったけど、この企画を通せるハリウッド映画の度量はさすがだよな...。日本じゃ絶対企画通らんわ。


20作以上出てるMCUの中からこれを選んだのは、この映画が、それまでの壮大で面白いシリーズの中でも、子供がワクワク楽しめて、マニアも十分満足出来て、そして大人が深く読み取ろうとすればしっかり考えることの出来る懐の深さがある映画だから。


この映画がアメリカで作られたのは意味がある気がする。
00年代の対テロ戦争を経て、世界の警察である事に疲弊したころに始まったこのMCU映画群が、正義(兵器)の在り方と管理の是非を問う。さらにその先へ一歩踏み出そうとしてるあたり、アメリカの人たちも色々思うことがあるんだろうと思う。

 

まぁぶっちゃけ娯楽映画なのには間違いないから、そんなに深いこと考えなくても楽しめる映画。けど、結果的にこの映画をきっかけに自分はMCUの映画を最初っから全部みていくことに...。


しっかし、宣伝の仕方から企画も含めてホントにマーベルは上手いことやるよなぁ。