映画の感想などなど

自分が観た映画の思ったまんまの感想。

スパイダーマン スパイダーバース

スパイダーマン スパイダーバース』

公開:2018年(日本公開2019年)

主演:シャメイク・ムーア(日本版:小野賢章)

監督:ボブ・ペルシケッティ&ピーター・ラムジー&ロドニー・ロスマン

製作:アメリカ合衆国

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《最も愛されるヒーロー、蜘蛛男》

今やとんでもない数作られているアメコミヒーロー映画。

その中で全世界で1番有名なヒーローは?

1番人気なヒーローは?

...こんな問いかけするとあまりに色々出てき過ぎてだいたい答えが決まらない。場合によっては荒れる。

自分の中でも候補は?って言われたら...スーパーマンバットマンウルヴァリン、...うん。いくらでも出てくる。

ただ、

「最も世界中の人々に愛されているヒーローは?」

って言われると、結構な割合の人がスパイダーマンを挙げるんじゃないだろーか?

 

ウェブヘッドのグッズは世界のどこにでも見られるし、どこの国の子供もスパイダーマンのポーズを決めることも出来る。

 

さて、このアメコミそのもののアイコンであるこのヒーローの映画。今回長編アニメーション部門で受賞したくらいだから流石に気になって映画館でやっと見た。

しかし、いざ観てみるとこの映画。

 

「アニメじゃない!!」

 

 

《スパイダーバースとは...》

まず、この映画はコミックの映画化なんで当然原作がある。「原作スパイダーバース」なわけだけど、日本のマンガコミックに慣れ親しんでる日本人にとってはかなり奇妙なマンガである。

多元世界のスパイダーマンたちが一同に集まって世界を救う!てよくわかんない世界観。

これはアメコミのキャラの権利が出版元の会社に帰属してるからできる芸当だ。一度人気が出たキャラクターは、別の漫画家が別の物語に変えてしまうってことが可能なんだよね。

向こうの出版社にかかれば極端な話、幕の内一歩が超能力バトル繰り広げても、ルフィが巨大ロボットに乗って宇宙バトルを繰り広げてもいい。孫悟空がホントにただの猿になってても、ナルトが女キャラになってても、アメコミなら面白ければアリ。

 

そんなアメコミのヒーローの中でも一際色んな姿で描かれてきたのがスパイダーマンである。

日本だって、わかりやすい例であの「スパイダーマッ!!」がいるしね。

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そういった原作をもつ「映画版スパイダーバース」。これまたこれまでのどの作品とも違う新しい世界を産むことに成功してる。

 

 

こっからネタバレあり。

 

《アニメ?実写?コミック?》

この映画の何が新しいかというと、カテゴリ分けが出来ないこと。

アニメーション部門で受賞してんだからアニメでしょ、て思うかも知らんけど、この映画に関してはその線引きが無意味だと思う。

実写と見間違えるくらいリアルなCGとか、原作のイメージに近い表現とかはよく見るけど、これはそのもう一歩先に行ってると感じた。

 

例えば...本作の中年ピーター・パーカー

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スパイダーマンの中の人と言えばまず思い浮かぶこの人。この人はこれまでトビー・マグワイア等が演じた実写映画のピーターと同一人物だと思ってほぼOK。劇中でも明らかに過去の実写映画意識した場面もあるし。

この人の動きや仕草は実写のそれとほぼ同じ。腹出てるけど...。

 

それと同時に登場してる他の世界のスパイダーマンたち↓

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1番左のスパイダーグウェンはピクサーのCG映画っぽいけど、隣のペニー・パーカーは思いっきり日本のアニメ風、1番右のスパイダーハムちゃんも向こうのアニメ風とか、それぞれの世界のイメージの表現を上手く使い分けてる。

で、凄いのがこれが不自然な感が無いんだよね。

シーンによってワザとフレームレートを落としてアニメっぽくしたり、全体的にマンガのトーンみたいなスキンをかけてコミックっぽいシーンにしたり...どれもやり過ぎるとくどい表現方法だけど、絶妙なバランスでアニメともマンガともちょっと違う独特な世界になってる。

文字通り「スパイダーバース」ていう世界を作ってる。

細かいことは抜きにしてアクションと音楽だけでも相当楽しめるけどね。

 

 

《この作品を映画にする意味》

たくさんのヒーローが一同に会する映画は、アベンジャーズで大成功して溢れてるわけだけど、この映画は表現したいことや伝えたいことがちと別のところにある。

 

主人公マイルス・モラレスは、(厳密には他にもたくさんいるが...)2代目スパイダーマン

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超〜〜〜乱暴にこの映画を紹介すると、彼がスパイダーマンになるまでを描いた作品になる。

 

なんだけど、

ど〜やってスパイダーマンになるのか?

「ある日特殊な蜘蛛に噛まれて、特別な力を手に入れて......」

って言う事を説明するためならわざわざこの映画を作る必要はない。

それこそ

「あとはみんな知ってるだろ?(ピーター)」

で済むことある。

過去の映画で(何度も)そんなんやってる。

 

この映画を通してやってるのはそれとはまた別のところ。

スパイダーマン」とは?ヒーローそのものとは一体何か?これを問うこと。これが一番肝になる。

 

この映画で1番良いなと思ったのは、マイルスの「マスクは誰だって被れる」というセリフ。このセリフがスパイダーマンって言うヒーローの特殊性と魅力を1番端的に表してると思う。

マスクを被るのは必ずしも特殊能力を持った超人である必要は無いってこと。

あのマスクとスパイダーマンって言う名前はあくまで象徴であって、人を助けたいと思った時に誰でもなれるもの。

ピーター「あとは勇気だけだ」

 

色んな姿の同じヒーロー。この設定...というか、このアイデンティティを上手に扱った良い作品だと思う。

「ピーター・パーカー=スパイダーマン」を否定せずに、でも映画でしか知らない人たちも「スパイダーマン=ピーター・パーカー」ではないことに気づかせてくれる。

ウルヴァリンバースでもなく、スーパーマンバースでもない、このヒーローにしか出来ない、作れない映画だと思う。

 

結局はこれが「最も世界中に愛されるヒーロー」たる所以なんだろう。

糸は出せなくても、摩天楼を飛び回れなくても、ちびっ子達に「君もなれるんだよ」って言えるヒーローってなんだか素敵やないの。

 

で、新世代マイルスのキャラクターもこの作品で世界中に受け入れられたんじゃないかな。コミック初登場の時は黒人が新しいスパイダーマンだってので色々物議を醸したらしいけど、そーゆー狭い視野からの意見吹き飛ばすだけのエネルギーを持ったキャラだった。

単純なアクションシーンも音楽もよく似合ってて、正直トム・ホランド版よりオシャレでカッコいい。

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蜘蛛マークは個人的に歴代の中でも相当カッコいいと思う。経緯も含めて。

 

 

 

《全てを肯定する作品》

ネットで知った人の中には、東映版のスパイダーマッ!をマーベルの黒歴史だと勘違いしてる人多いと思う。けど、アレってスタン・リーも評価して、日本版の方も受け入れてくれてるんだよね。原作スパイダーバースではレオパルドンも出てるし。

これまでの作品を受け入れて、作品にするという意味で、何となく「ターンエーガンダム」が思い浮かんだ。

 

興行収入の歴史に名を刻んだ、生真面目なトビー・マグワイア版も、

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大人の事情で3作目が作られなかったアンドリュー・ガーフィールド版も、

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これからも作られていくだろうどの作品もそれぞれのバース(世界)として受け入れられ続ける。なんか夢がある話じゃないっすか?

 

 

 

 

 

 

 

P.S.今作でも勿論登場したスタン・リーおじいちゃん。あなたの産み出したヒーロー達はこれからもちびっ子達や自分みたいなおっさんになったかつてのちびっ子達を魅了し続けると思う。あの世でもお元気で。