るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 追憶編
原作:和月伸宏
監督:古橋一浩
キャラクターデザイン:柳沢まさひで
アニメーション制作:スタジオディーン
製作:SPEビジュアルワークス
発表期間:1999年2月20日 - 9月22日
話数:全4話(全4巻)
《ジャンプ漫画と実写映画》
自分が小学校から中学校にかけて、最もハマっていた漫画二つ。
どちらも漫画、アニメ版両方何度となく見返して、当時概ね台詞を覚えてしまってるレベルでハマっていた。当然少年漫画なので、子供が読んで楽しむものだと思っていたし、るろ剣についてもジャンプ特有のバトル漫画として読んでた。
それが、現代に至って何作も作られる実写映画になるなんてとても想像してなかった。
↑色々話題にもなった実写化第1作目。漫画実写化で数少ない大ヒットした成功例。牙突吊り上げ式は目をつぶろう。
↑実写化第2・3作目。前編後編の二部作で京都編を実写化。志々雄真実役の藤原竜也は人によっちゃ否定する人いるけど、じゃあ他にどの俳優ができるの?て感じ。ちなみに瀬田宗次郎役は実写化前に予想したのが見事に的中した。
↑そして公開が延期された4・5作目。再び二部作で人誅編がつくられる。
しかしこの『人誅編』、実写化のハードルが非常に高いから作らないだろうと思ってたけどようやったな〜。この映画、公開はまだだけど、ファンほど相当シビアに評価されると思うんだけどなぁ。
↑雪代縁のビジュアルは結構原作に寄せててびっくりした。
今のところ実写版は全部劇場で観てるし、結構期待はしてる。
...どーでもいーけど、邦画のポスターのセンスのなさってどーにかならんものか...
《追憶編》
『人誅編』を実写化するにあたって最も高いハードルが、『人誅編』を作るなら《追憶編》を描くことは避けて通れないということだろう。
超〜〜〜今さらながら「るろうに剣心 明治剣客浪漫譚」のストーリーを簡単に辿っていくと...
〜かつて幕末最強と謳われた伝説の人斬り、長州派維新志士、緋村抜刀斎。幕末終盤に活躍した彼は、鳥羽伏見の戦いを最期に忽然と姿を消した。
そして時は流れ明治11年、人斬り抜刀斎は、刀を逆刃刀に変え、不殺の誓いを立てて、全国を放浪しながら自分の罪の償い方を探するろうに(造語)の緋村剣心として人助けをしながら生きていた...。
うーむ、粗筋書くのって難しいww
この漫画の他と違うところと言うと、多くの漫画でスルーされる、「ヒーローなら敵を殺してもいいの?」っていう根本的な疑問を突き詰めて物語を作っているところ。なので、少年ジャンプの漫画としては珍しく、主人公が大人、物語のテーマが贖罪である。そんなところに惹かれて自分もこの漫画にどハマりしていた。
そして、この「追憶編」はその最も根幹となる「主人公の罪」に関する物語。なので...とても重い...。
ジャンプ漫画としてもかなり暗い。いわゆる「過去編だけ」で構成されているから原作を知らなければバッドエンドになる、かな?
ただ、このOVA版「追憶編」、クオリティで言うと、実写版のこれまでとテレビアニメ版と、下手すりゃ原作漫画も含めても、最も質の高い作品ではなかろーか。
《時代劇として観た「追憶編」》
この追憶編の構成は全四話のOVA作品として作られている。各話30分ずつ、全体で約2時間なので、ほぼほぼ映画を一本観る感覚で視聴できる。そして、原作の内容を根本は変えずに、描き方を思い切った変え方をしてバトル漫画を時代劇に丁寧に作り変えている。
まずは絵柄について。
↑原作版抜刀斎。まぁ、とーぜんカッコいいですわな。
一方...
↑「追憶編」の抜刀斎。
見ての通り、絵柄がテレビアニメ版とも原作とも全然違う。劇画というかかなりリアル路線の絵柄。
必殺技名を叫ばない、っていうのも原作とのわかりやすい違い。ただ、それとわかる必殺技は撃ってるし、人斬り時代なのでなかなかに過激な戦闘シーンはあるので苦手な人は注意。
↑雪代巴。
このOVA版では、原作のように逆立った髪型や大きな瞳は描かれず、虹彩の光も必要以上に描かない。そしてシーンによっては顔の判別がし辛いくらい画面が暗かったりする。
明らかにわざと他の作品と差別化してるので、最初は結構戸惑う。
現実に近いライティングを使ってるシーンもあり、アニメ作品としてはちょっと変則的な作りをしている。
そして、風景描写には実写映像とアニメーションを組み合わせた、当時としては珍しい演出が要所要所に挟まれる。
これが実に美しい。おそらく本当の京都、大津あたりの風景を取り入れてるんだろうと思う。一つ一つのシーンがとてもアニメとは思えない上質な映像で幕末の日本が丁寧に描かれている。
また、全四話の物語で、一話ずつ日本の四季を描いている。様々な季節のモチーフとして、鬼灯、ざくろ、菖蒲、祇園祭、秋茜、などが出てくる。
この細かい描写は、原作でも物語の鍵として出てくる『白梅香』の存在をより際立たせることに繋がってるように思う。
ここまでごちゃごちゃ書いたけど、本当に一つ一つを丁寧に作り上げているので、自分の中では完全に幕末時代劇として認識してる。
また、原作の魅力の一つだった、史実とフィクションのやり過ぎ一歩手前ギリギリのラインでの繋がり。
↑新撰組。
あまり詳しくはないんだけど、司馬遼太郎のイメージは強いのかもしれない。物語中には池田屋事件や禁門の変が描かれて、動乱の世に身を投じたヒーロー達が物語に華を添える。
原作ではやっぱり少年誌だからトンデモ必殺技やちと無茶だろ、っていう展開もあったりするけど、ギリギリ原型を残す形で現実的なアレンジをしてるから、外連味と渋さのバランスがちょうどいい感じ。個人的には新撰組好きなので原作より描写が多くて嬉しい。
《十字傷》
ここから原作知らない人はあまり見ないこと。
ネタバレ映像だらーけ。
最終話の第四幕では、剣心が人斬りを辞めるきっかけとなる出来事、当人にとっては長いこと苦しめられることになるトラウマ が描かれるわけだが......
この第四幕......全てがひたすら美しい。
↑原作でも勿論相当に力の入ってるシーン。雪の降る中での雪代巴の最期。
OVA版.........
これ以上画像を使うと文章で書く意味なくなるからこのくらいで。
とはいえ、このシーン含め、最期の第四幕は文章で説明するのが非常に難しい。音楽、カット割り、情景、間。全てがホントに美しい。こればっかりは観て!!と言うしかないくらいに凄い。
ちなみにこのOVA版は、原作の更に後の物語を描いた「星霜編」も作られている。
↑こちらは主人公緋村剣心とヒロイン神谷薫の人生の結末が描かれている。...が、あまりに暗く、哀しい結末のため観るには「追憶編」以上に覚悟が必要。
今回紹介したOVA版「追憶編」。日本では非常に高い評価だったけど、原作とのあまりの雰囲気の違いに原作ファンからは一部否定的な評価もされていた。
が、この作品、海外では恐ろしく高い評価をされていて、アニメーションの枠をこえた名作として扱われてるらしい。
海外では「Samurai X」のタイトルで展開されたるろうに剣心だが、国によってはガンダムシリーズより知名度のある作品だとか。
日本の時代劇(実写含む)映画の中でも自分はベスト5に入るんじゃないかと思ってるけど、どーだろ?
実写版「るろうに剣心」の最終章がどのようなものになるのかまだわかんないけど、延期されてる間か、公開された後か、是非このOVA版「追憶編」を観て欲しいと思う。
...後者の方がおすすめできるかな〜?