映画の感想などなど

自分が観た映画の思ったまんまの感想。

127時間

『127時間』

公開:2010年

監督:ダニー・ボイル

主演:ジェームズ・フランコ

制作:アメリカ合衆国・イギリス

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最初のブログでも触れた映画だけど、この映画に関しては是非人に勧めたい映画だと思うのでちゃんと書きたい...が、かける自信なし。

ダニー・ボイル監督映画では、トレイン・スポッティングも好きだけど、こちらの方がさらに好きな映画である。

去年に続いて2年連続その年最後に見る映画になった。そんだけ特別お気に入りの映画。

 

 

以下、明らかにネタバレな画像あり。

 

 

 

 

『あらすじ』

2003年のとある週末、登山家のアーロン・ラルストンはユタ州のキャニオンランズ国立公園にキャニオニング(トレッキング・クライミング・懸垂下降などの技術を用いて渓谷を下るスポーツ的なもの)に出かけようとしていた。金曜の夜のうちに準備は完了。

自由奔放な彼は、妹からの電話も無視して、行き先を誰にも告げず夜のうちに車で出発。翌朝には自転車とバックパックのみで渓谷へと飛び出していく。

途中で出会った女性2人をナンパ(道案内)して、秘密の天然プールで遊んだあと、明日の町のパーティに出席する約束をして別れる。(ここだけフィクション)

その後も、自分にとって庭同然のブルー・ジョン・キャニオンという渓谷で、1人キャニオニングを楽しんでいたが、途中で大きな岩とともに滑落。岩と壁に右手が挟まれてしまい、身動きが取れなくなってしまう。

 

持ってきているものは、ビデオカメラ、わずかな水、わずかな食糧、万能ナイフなど。

岩を動かすことは出来ない。

助けを呼んでも誰かが来るような場所ではない。

127時間もの間、確実に忍び寄ってくる死から自力で脱出するために、アーロンはある行動に出る。

 

 

『この映画の概要』

この映画は限定された状況でのサバイバルをメインとした、ソリッド・シチュエーション映画であると言って良いのかな。またかよ、って感じだけど、この手の映画は本作以外あんまり観ていない。この前書いた「オン ザ ハイウェイ」はちと特殊な密室劇だしね。本来そんなに好きなジャンルではない。

 

この映画におけるシチュエーションを一目でわかってもらうとしたら、この画像ならわかりやすいかな?

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ご覧の通りで、右手が岩に挟まれてて、その岩に乗っているものが主人公が持っている装備の全て。

そして、この物語、実在する冒険家、アーロン・ラルストン氏の身に実際に起きた出来事である。

 

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この人が本物のアーロン氏。本人もわりとイケメン。映画のラストシーンにも御登場する。

本人曰く、「岩に挟まっている間の描写はドキュメンタリーと言って良いほど忠実」だそうだ。

本人が生きてることと、タイトル自体がもうネタバレなんだけど、この人ホントにこの状況を自力で脱出してます。

脱出方法も姿を見ればすぐにわかると思う。

ネタバレしてみても全然構わないと思う。

 

 

『映画としての描き方』

↓原作の自伝。

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この本をもとに本作は作られている。

劇中でもやってるけど、手を挟まれてから脱出までの六日間...自分に死が近づいていることから、アーロン氏は家族や友人宛にビデオでメッセージを撮影している。

ホンモノのビデオは家族への配慮から公開は控えてるみたい。

そりゃ、6日で20キロ近く体重落ちて、死に向かう家族の映像が世界中にみられるのは辛いわな。

 

「オン ザ ハイウェイ」と違って回想とか色々はさむけど、基本的にこの映画はこのビデオカメラへの言葉や独り言メインで構成されている。

普通こういう作りの映画は場面が単調で閉塞感が強くて、観ていて息苦しくなるもの。

なんだけど...この映画の凄いところは、全く動きがない映画なのに全然息苦しさを感じない。それどころか、自然のデッカさとか、開放感とかさえ感じる。日照の変化や、渓谷の雰囲気の美しさで、主人公の置かれた状況を忘れてしまうくらい。

流石はダニー・ボイル。水を飲むだけでも映像がオシャレで退屈しない。音楽もやっぱり良いセンス。

だからか、この映画観てて不思議と絶望感は感じない。

 

 

『この映画で感じること』

この映画で絶望的状況とかサバイバルそのものがテーマならもっと暗く、シリアスな雰囲気にするべき。でもそういう描き方は選んでいない。

それは原作者の本人が絶望しなかったことがでかいと思う。

劇中で、これまでの自由気ままな人生を後悔するような描写もあるし、遺書がわりのビデオメッセージ撮ってるから、本人も覚悟はしてたんだろうけど、それでもやっぱり暗くはない。

それより、身の回りの家族や友人の存在の大きさに気づくっていう意味合いの方が大きくて、ネガティブな方向へはあまりいかないんだよね。

 

この映画の終盤でアーロンは脱出のためにある行動に出る。ご本人の写真見れば一発でわかるんだけど、とんでもなく痛いことをやる。このシーン、公開した時は失神者がたくさん出たそうだ。

その場面は、グロいものとか残酷描写苦手な人は、そこだけ目をつぶったほうが良いかも。音も痛そうなんだけど。

本当に何度見ても不思議なんだけど、そんなキッツイシーンなのに、この場面ですら暗い陰鬱な印象が一切ない。自分の一部を失うことへの後ろ暗さもない。ここはホント不思議。

 

それはこの映画が『生きることへのエネルギー』に満ち満ちているからだと思う。

あとで気になってご本人のこと調べてみたんだけど、本人はこの場面、実際に笑ってたそうだ。脱出した後も、本当に、「自由だ!」て叫んで現場の写真すら残したそうだ。

現場を立ち去る際にアーロンは5日以上自分を閉じ込めた岩に対して「ありがとう」と言う。この経験を通して自分が失ったもの以上に、得たものの方が価値あるものだと捉えている証拠だと思う。

「何を犠牲にしても!」とかそう言った印象がないからこそこの映画は最後明るい太陽の下でエンディングを迎える。

最後の最後で流れる文章も何か素敵なんだよなぁ。本人の幸せそうな今の姿も見られるし。

なので、終わりは相当晴れやかな気分で観終わる。

 

補足:脱出してすぐに救助ヘリが到着したことに、初めて観た時には不自然さを感じた。出来過ぎじゃね?と。

けど、実際には職場の仲間が「アーロンが無断欠勤するのはおかしい」ってことで、すぐに警察に連絡、本格的な捜索が始まってたそうだ。原作の小説ではそーいったことも著されているらしいので、機会があればちゃんと読んでみたいと思う。

 

まとめ

90分程度の短い映画である。(少なくとも自分は)全く退屈せずに観れる映画である。ボルダリングとかする人は渓谷の風景も楽しめる。観終わった後でちょっとだけ「明日も頑張るか!」って気分になる映画である。なので、グロ耐性が多少必要って条件付きではあるけど、この映画はわりと色んな人にオススメ出来る映画じゃないかな。

自分は初めてレンタルで観た時は2回見直して、何か節目の度に観るようになった。2018年の締めに、と思って借りたけどやっぱり良かった。人生でこういう映画に出会えるってのは幸せなことやと思う。他の人がなんと言おうと自分にとっては本当に良い映画。

 

さて、来年はどんな映画と出会えるかな〜?