映画の感想などなど

自分が観た映画の思ったまんまの感想。

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

『Once Upon a Time in Hollywood』

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監督:クエンティン・タランティーノ
出演者
レオナルド・ディカプリオ
ブラッド・ピット
公開:2019年7月26日
製作国:アメリカ合衆国:イギリス

 

国内が現在こんな大変な状況な中で、映画を見るのは精神衛生上自分には必要なことである。だけど、映画館には行けない。なのでレンタルショップに5分間だけ滞在して借りてきた。

そんなバタバタかりる作品と言えばもう話題作有名作しかないわけで、発掘するような映画の見方が出来ないことが残念で仕方ない。

 

《映画好きによる監督本人のための映画》

さて、アカデミー賞で10部門にノミネートされた本作。ハリウッド界の映画オタク代表、クエンティン・タランティーノ監督による映画。事前情報としては、ブラピとディカプリオが初共演した作品であること、実際に起きた事件をモチーフに作られた物語であること、くらいしか知らずに借りた。

まぁ、タランティーノ監督は「自分が観たいものを作る!」って言うスタンスだから好み分かれるかな?と思ったけど、素敵なエンターテインメントに仕上がってた。

 

というかタランティーノ監督、ブラピがアメ車転がしてるところ撮りたいだけなんじゃ...と思うくらいブラピの運転姿がカッコ良かった。この監督、どう撮れば俳優さんが映えるかホントによく理解してる。それこそ、自分が観たい!と思うものを作ってるからなんだろうけど。

 

 

 

《かんたんな内容》

ハリウッド史に残る惨劇、シャロン・テート殺人事件をモチーフにした物語。1969年のハリウッドを舞台に、映画の舞台裏と俳優たちを描いた作品。

リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)は、かつてテレビドラマの西部劇で主演を務め人気を博した俳優である。が、映画俳優としての活躍が思うようにいかず落ち目であり、精神的に不安定な状態。

このリックの専属スタントマンとして、常にリックのそばにいるのがクリフ・ブース(ブラッド・ピット)。こちらはトレーラーハウス暮らしで飄々とした人物。帰還兵でありスタントの腕も確かだが、暴力沙汰を起こしたり、スタジオから嫌われたりでリック同様仕事はうまく行ってない。

 

こんな2人(架空の人物)が、実際に起きた事件に絡んでいくことになる。ただ、正直シャロン・テート事件については、ハリウッドのセレブが殺された、くらいの知識しかなかったから正直どこまでが実話なのかそんなにわかんなかった..ww

 

 

《ブラピとディカプリオ》

この2人が共演するってこと自体がまずすごい。これまで何度もニアミスしては共演に至らなかった2人。両方とも好きな俳優。2人がスクリーンに並んでるってだけで何と豪華なことか。2人とも若い頃は美形のアイドル扱いをされてた時期があるけど、どちらも今は全然違う。

ブラピは『バベル』や『ツリー・オブ・ライフ』のような芸術的作品にも出るし、『フューリー』の様なザ・漢!な役柄も演じる。アクションもやるし多才なイメージ。

一方ディカプリオの方は、タイタニックの頃のアイドルイメージから、『アビエイター』や『ギャング・オブ・ニューヨーク』などを通して脱却し、『レヴァナント』で念願の主演男優賞を受賞。職人気質の名優としての地位を揺るぎないものにした。

 

この2人に共通してるのが、両方とも良い歳の喰いかたしてるとこ。

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↑これが...
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↑これ。オフの姿が批判されることもあるけど、一流俳優の貫禄たっぷりで、なんというかスクリーン映えするんだよなぁ。

 

そして、
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↑これが

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↑こう。

ファイトクラブとかセブンのころが、超絶イケメンだったのは間違いないんだけど、今の渋いオッサン姿もカッコいい。『フューリー』とか最高だったし。自分もいつかこんな50代に...いやムリです。

 

若手の頃からハリウッドのトップを走り続けてきた2人(ディカプリオは活動休止期間もあったかな?)は、もう一つ、「映画のプロデュース業も手掛ける」という共通点がある。ディカプリオは実写版『AKIRA』をプロデュースするってのは果たして実現するんだろうか?

ハリウッドの制作現場の裏も表も、酸いも甘いも経験してきてる2人が演じるので、説得力が段違いである。

 

 

《ハリウッドの映画界あれこれ》

1969年と言うと、アメリカではベトナム戦争の影響が色濃く出ている時代である。かつての夢と希望に満ちた映画から、いわゆる「アメリカン・ニューシネマ」が誕生し、アンチヒーローや悲劇的な結末が描かれる様になり、若者はヒッピー文化に傾倒していく時代。テレビの普及という変化も併せて映画をとりまく環境が変わっていた時期...だったらしい。

主人公リックもその変化に対応し切れず、時代に取り残されている俳優の1人として描かれているんだけど、当時、テレビドラマの俳優が映画界で活躍することが非常に難しいとされていたこととか、色々裏の面が描かれていて面白い。

イタリアで作られた西部劇、日本で言うところのいわゆる『マカロニ・ウエスタン』への出演が、当時のイタリア映画の完成度の低さからアメリカ人にとっては『都落ち』と認識されていたこととか現代人の自分は全然知らなかった。クリント・イーストウッドはやっぱり偉大だってことかなww

 

んでもって、自分でさえ知ってる当時のハリウッド界のスターたちが物語にちょこちょこ絡んでいるのも面白い。『大脱走』のスティーブ・マックイーンとか、『グリーン・ホーネット』でアメリカ進出してやや調子に乗ってるブルース・リーとか。不自然にならない良いバランスで、んでもってややタランティーノの主観がはいった描かれ方で登場する。タランティーノ監督って色々極端な映画を作るイメージがあるんだけど、こういったエンターテインメント性に関してはホントに上手いこと作るよなぁ。

 

《ディカプリオの存在感》

ハリウッドの自分が好きな映画俳優のレジェンド達っていうと、自分が子供の頃から既に有名作品に多数出演していた人ばかりである。アーノルド・シュワルツェネッガーはもう72歳だし、トム・クルーズもブラピも50代後半。みんな自分が小学生の頃にはすでにスターだったイメージがある。

勿論ディカプリオも自分の一回り上の世代の45歳なんだけど、この人については結構自分の年齢といい具合にマッチしてるんだよね。

ギルバート・グレイプ』で話題になった後、『ロミオ+ジュリエット』と『タイタニック』で大スターにのし上がっていく頃がちょうど自分が小6くらいの時だった。つまりスターになり始めてから一流のベテラン俳優になるまでをリアルタイムで見ることのできた俳優である。なので、『レヴァナント/蘇りし者』で最優秀主演男優賞獲った時は、「ついにやったか!!」となんだか嬉しくなったもんである。

 

そのディカプリオの演技がやっぱめっちゃ良い。落ち目の情けない俳優って役どころを『タイタニック』の頃には絶対出せなかったであろうすっごい味のある演技をしてる。

劇中劇の撮影の合間、共演する子役に自分の現状を(遠回しに)語って嘆くシーンがあるんだけど、そのシーンがもう...ホンッッッットに情けない。

10歳くらいの子役に慰められて情けない涙を流すだっさいオッサン...爆笑しながらもなんだかこっちも泣けてくる。

ちなみにこの時の子役、ジュリア・バターズっていう女の子の演技もすっごい。正に天才子役。

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↑この子。この年齢でこんな表情の演技出来るとか...やっぱ海外は違う...。

 

 

この映画を通して、普段はブラッド・ピットの映画の方が観る回数多いけど、ディカプリオの映画もっかい見返そうかな?と思うくらい凄く良かった。

 

 

《スター達の悲喜交交》

ハリウッドという場は、俳優達にとっては夢の世界である。1969年よりも昔から、現代に至るまで、そしてこれからもそうだと思う。その歴史の中で、世界中に名の知れ渡る俳優になれるのは一体どのくらいの割合なんだろう?

最近の向こうの業界はポリティカル・コレクトだとか何とか色々ややこしい制約が増えて少し窮屈に感じることがある。それでもスポットライトを求めて多くの人々が夢を追って破れて消えてゆく。そういった人たちにとってこの映画はちょっとした希望になるのかも。

 

史実とはいろいろな面で違い、シャロン・テート事件も全く別の結末を見せるこの映画。ある意味ファンタジーである。

最後のブラピの痛快な暴れっぷりはタランティーノ監督にとって、『昔々、ハリウッドで』起きた陰惨な事件と、その時代への報復であると同時に、映画を観る人演じる人への愛情たっぷりな贈り物だと思った。ラストシーンのあの穏やかな空気を吸って俳優さん達はこれからもハリウッドのスクリーンへ向かっていくのだろう。