公開:2016年
監督:佐藤信介
主演:大泉洋
原作:花沢健吾
制作:日本
ややネタバレあり
〈漫画原作の実写映画として〉
漫画原作の実写映画は日本じゃ難しい。成功するのは稀。ていうのは自分1人だけの認識ではないと思う。まだ、中高生向けの恋愛ものは人気の若手イケメン俳優並べておけば勝手に客が金落としていくからマシではあるけど...それを果たして作品と言えるかどーか...(暴言失礼)
そんな中でこの映画はどーかと言うと...漫画の実写化って言うと微妙に違う面があるけど、よく作ったと思う。
原作は結末が賛否両論...というか否の方が多いラストを迎えてしまった。(自分は十分アリだと思う。てかパンデミックものって大体あんな感じじゃん)それに対して映画の方は、あくまでゾンビ映画を作ることに注力して無駄なものはバッサリ切った感じ。「クルス」関連も全て切り捨てて、感染者もシンプルにゾンビにしてるんで、正直原作とは別物。
これに腹をたてる原作ファンが居ても仕方ない面はある。だけど、実際映画として2時間の枠に収めるとこれがとても良い。あれ以上を実写でやるとどうしてもムリが出るし、原作の結末に余計なもん加えたら尚更歪な話になる。だから見せ場をあの銃撃戦に持っていって余計な蛇足入れなかったってのは英断だと思う。
原作が「日本でゾンビ系漫画を作るとどんなのになるか」を描いたイメージに対して、実写版はあくまで「日本が『ゾンビ映画』を作るとどんなのになるか」を撮ることに集中したんだな、というイメージ。
〈ゾンビものとして〉
「日本で」パンデミックが起きた時にどーなるのか。なんかネットでそーゆー議論よくあるけど、自分はわりとすぐ死ぬポジションな気がするんで、解決するまで自宅に立て籠もる派です。
てのはど〜でも良いとして。
日本とゾンビものってとにかく相性が良くない。なにせこの国では銃を所持すること自体が非常〜〜にハードルが高いから。
貞子と違ってゾンビは物理的に倒さなきゃ映画が成り立たんのにその手段がめちゃくちゃ乏しい。
だから日本のゾンビものでヒットするものは「バイオハザード」みたいなゲームでかつ外国の話が殆ど。ゾンビ映画でまともに成功したのって殆どないんじゃなかろーか。
この物語はそこを逆手に取って「日本人ならこうなるよな」って、お国柄をよく考えてゾンビ映画って言うジャンルに溶け込ませてある。
街に異変が起きても「あ〜なんかやばそーだなー」位の感覚で危機感足りない感じ。銃社会のアメリカならすぐに自ら戦うことになるけどそれが出来ない。ゾンビ相手にですら初対面には敬語で話しかけるのが日本人なんです。
〈主人公について〉
その分クライマックスの銃撃戦はかなり観ていて熱くなる。『主人公の英雄は趣味で猟銃を所持している』というのが映画も原作も重要なポイントになってるんだけど、この主人公、あくまで日本のイチ小市民。なので当然実戦で銃を撃つこともありえない。序盤から所持してるのに全然撃たない。どころか最初に撃ったのは別の人。とても主人公とは思えんヘタレっぷりだけど、最後の最後まで引っ張っての「は〜い」
ここに関しては原作読んでた人でも興奮するんじゃないかな。
個人的にはその直前のロッカールームのシーンが1番好きだけどね。あの繰り返しのシーンは映画ならではの表現ですっごい好きだった。
猟銃撃ちまくるシーンはスプラッタもの苦手な人は若干キツイかも知らんけど、まぁ他にもエグい映画いくらでもあるからなぁ。
英雄の生真面目なキャラのために大泉洋は実銃で射撃訓練したらしい。その甲斐あってか、撃つ姿はかなりサマになってて観ていてスカッとした。
〈全体通して〉
今回改めて見返したけど、この「アイアムアヒーロー」、ゾンビ映画としてのお約束はしーーっかりと押さえた作品なんだなと思った。
身内のゾンビ化、ショッピングモールで立て篭もり、人間同士の争い、などなど。加えて海外ではコメディ的なノリで楽しめて大絶賛だったらしい。日本らしい設定と雰囲気がそれを産んだのかな?
正直アラが全くないかと言うとそうじゃないとは思う。ゾンビメイクとかCGがハリウッドに比べたらちゃちく見えるとか、タクシーいくらなんでも回転し過ぎだろとか。
けれど、それが全く気にならないくらいにはよく作られた映画で、この手のジャンル好きなら観て楽しめると思う。何よりこれを日本が作ったっていうのが、個人的に嬉しい。