映画の感想などなど

自分が観た映画の思ったまんまの感想。

バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」

原題:Birdman or (The Unexpected Virtue of Ignorance)

公開:2014年

監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ

主演:マイケル・キートン

制作:アメリカ合衆国

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アカデミー賞作品賞はじめこの年の映画賞を取りまくった作品。なんだけど、当時は他に観たいもの多くて手を出さなかった映画。

 

というのも、アレハンドロ・イニャリトゥ監督

の映画って2作品しか観たことなかったんだよね。

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「バベル」この映画も相当見応えある映画だった。で、何度か見返したりもしたんだけど、...基本暗いんだよね、この人の作品。

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2015年には「レヴァナント:甦りし者」で、ディカプリオに主演男優賞を取らせることになる凄い監督なんだけど、こっちも暗い。

 

で、「バードマン」はこの監督が作ったコメディって聞いていまいち想像がつかなかった。作風がコメディに結びつくイメージがないというか...

で、結果なんだけど、正直、観てなかったことを後悔する良さだった。面白いわこの映画。

 

〈あらすじ〉

主人公は落ち目の俳優リーガン(マイケル・キートン)。かつてはヒーロー映画「バードマン」シリーズで活躍した大スター俳優...だった。今やその栄光も過去のもの。20年ヒット作に恵まれず、家庭も崩壊したドン底の60代。再起をかけて、ブロードウェイのミュージカルに挑戦するが...

 

という感じ。

 

〈映画俳優の映画〉

主人公がマイケル・キートンって時点でもう色々狙ってる感満載。かつて、バットマンを演じた俳優が『元』スターを演じること自体がもはやコメディ。別にマイケル・キートン自身は落ち目でもなんでもないとは思うけどもww

様々なアクシデントが降りかかるなかで、結構ブラックなジョークというかネタが出てくるんだけど、これがまぁなんかお洒落。

事故で急遽代役が必要になるんだけど、代役の候補に実在の俳優の名前ポンポン出したり、映画好きならなんかフフってなるネタが沢山ある。それをマイケル・キートンが言うもんだから妙な生々しさがあるしね。

因みに彼の名誉の為に言っておくと、マイケル・キートンは確かにバットマンの後、圧倒的な高い評価を受ける作品には恵まれてないけど、コンスタントに映画出続けてるいい俳優さんだと思う。『紅の豚』の海外版ではポルコ・ロッソの吹き替え担当してたりする。

 

そんな彼が本作「バードマン」で受賞した賞一覧がコレ。

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果たしてコレが「予期せぬ奇跡」だったのだろうか?実際に映画を観てみると、監督はこれだけのものをマイケル・キートンにもたらすことも全て織り込み済みなんじゃないかってくらい、丁寧に計算されて作られた作品だった。

 

 

 

〈この映画の手法〉

この映画、普通の映画とはだいぶ違う撮り方をしているので、普通の感覚で観ると混乱するかも。

 

例えば...映画の冒頭

「何処かで隕石が落ちようとしている映像」

↓場面切り替わって...

「どこかの汚らしい楽屋。ハゲかけたオッさんがブリーフ一丁で座禅を組んで宙に浮いている」これが始まり。

 

この流れを観て正直、「あれ?......ハズレ映画引いたか...?」て思った。流石にぶっ飛んでる。

なんかシュールな映像にあっけにとられるけど、すぐにこの映画の特殊性に気づくと思う。

 

①現実と空想の融合

この映画は現実と主人公リーガンの空想(妄想)の区別をつけていない。冒頭のシュールな映像もそうだし、自分が演じたバードマンからの語りかけもそう。

②オールワンカットの映像

冒頭とラスト以外全てのシーンがカットの切り替えなしで物語が進行する。もちろん、実際にはいくつもカット割りをしてるんだろうけど、劇中でそれには殆ど意識することはない。相当練り込まれた計算のもとで、見事に最初から最後まで途切れ目なく観ることができる。

 

この2つが、ただ映像のトリックとして使われるだけではなく、しっかりと意味をもたらしているのがすごい。

この映画を観ていると観客はなんだか夢遊病になったかのような感覚に陥る。これは続けられるワンカットがリーガンの迷走している自分自身を表しているから。

不思議な現象を起こしているのも、リーガンの願望や迷いをセリフを使わずとも表現出来る面白い見せ方だと思う。

 

オールワンカットの映画って映画の歴史でいうといくつかあるそうなんだけど、ここまで美しく表現するのは相当難しいと思う。全ての展開が丁寧に計算され尽くしているし、物の配置から何もかも相当練り込まなきゃこの映画は出来ないと思う。

全編ジャズ風のお洒落な音楽(しかもドラマーとかが普通に出てて叩いてたりする)も場面に合わせて展開されていくのもいい。

 

〈頑張るオッさん〉

自分はゲームでもドラマでもくたびれたオッさんが活躍するのが好きである。変な勘違いされそうだけど、キラキラした若者ばかりじゃ映画だってなんだって疲れるし。

この映画でもリーガンはかつての栄光にすがるジジイで、敗北者。

それが必死こいて何か成し遂げようとしてるのは観ていてたまらん。あのマイケル・キートンが、パンイチでブロードウェイの雑踏を走り抜けるんやからねww

結末をどう捉えるかは難しいところだけど、何かを表現する人にとっては非常に前向きなエネルギーを貰える良い映画だと思う。