『天気の子』
『Weathering With You』
監督:新海誠
出演者:醍醐虎汰朗・森七菜・小栗旬
主題歌:RADWIMPS
公開:2019年7月19日
製作国:日本
《新海誠監督の映画》
新海誠監督との出会いは大学生の頃、たまたま新海誠初作品だとか特に知らず観た『ほしのこえ』
脚本、作画・美術・編集など、ほぼ全ての制作を一人で作った天才による作品、としか知らずに観た。その頃はアニメを監督にまで意識することはそんなになかった。
とにかくすげぇひとが世の中にいるもんだなぁ、とだけおもって...そこまで深く考えずに観た。
ただ、この作品の時点で彼の根っこにある作品テーマは今も変わってない。と思う。
その少し後であの作品と出会う。
『5 Centimeters per Second
a chain of short stories about their distance』
公開:2007年3月3日
この映画は自分はちょっと語れない。自分の人生のあるひと部分にぴったりと重なった瞬間にみたせいで冷静な気持ちで観られなくなってしまった。それでも何度となく観てる。
この映画を観て直感的にこの作品の監督は、ひとが望む作品ではなく自分の描きたいものを一貫して作るタイプの人だと感じた。
自分の人生経験から切り取ったものを作品にするイメージ。これはこの後公開されるどの作品にも通じてるものだと思う。
《作品ごとの違い》
この人の作品、もし人に勧めるとしたら《現実に寄せた作品》と《ファンタジーよりな作品》にざっくりわけられる。それぞれざっくり紹介すると...
《現実寄り...ただし世界観が一部空想》
『空のむこう、約束の場所』
新海誠作品の評価として、美術面、美しい背景がよく挙がるけど個人的にはこの作品が1番綺麗だと思う。そして吉岡秀隆と萩原聖人の2人が思いの外声優として素敵。
《全面的に現実的》
『言の葉の庭』
『The Garden of Words』
出演者:入野自由・花澤香菜
公開:2013年5月31日
完全に現実世界での物語。そしてとても大人な物語。だけど紡がれる言葉は結構メルヘン(?)。
これもかなり好き。
《ファンタジーに全振り》
『星を追う子ども』
『Children who Chase Lost Voices from Deep Below』
出演者:金元寿子・入野自由
公開・2011年5月7日
これは世界観も全部完璧に異世界もの。賛否が分かれる理由に「ジブリでいいやん」と言われることがある。けど、やっぱり描かれるテーマは一貫して変わらず。自分は好き。
そして...世間様に1番人気の...
《現実世界の中のお伽話》
『君の名は。』
『Your Name.』
出演者:神木隆之介・上白石萌音
公開:2016年8月26日
これはねぇ...。やっぱりよくできてる。間違いなく名作だし、東京と飛騨の景色を美しく表現してるし、そりゃ大ヒットするわ、と思う。自分も劇場で観て、ラストシーンの『秒速5センチメートル』へのセルフオマージュも唸った。
いい映画。...なんだけどね...だけどね...すっごい複雑な気持ちなんだよね。なんだか話が良く出来過ぎてて読後感が爽やかすぎるというか...。いやでも普通世間様はこーゆーの求めるよなぁ...とか、なんとも言えない感じなんですわ。あくまで個人的に。
そういう意味では、『天気の子』も観ていてちょっと似た気分になった。『天気の子』も現実世界のお伽話だった。お伽話はやっぱり子供も観られるものじゃないといけない。子供が見る以上見終わった後の気分が良くなるものじゃないといけないから、ハッピーエンドが基本だと思う。だから物語としてはスッキリ出来てて良い作品だと思う...んだけどねぇ...。
何故こうも言葉を濁すのかと言うと、自分が新海誠作品で1番好きなのが『秒速5センチメートル』の『コスモナウト』だからである。
『秒速5センチメートル』は「桜花抄」、「コスモナウト」、そして「秒速5センチメートル」の3作からなる連作短篇アニメとして作られた。
その中で「コスモナウト」は、種子島を舞台に高校生の淡い恋心が描かれる。「桜花抄」の主人公貴樹くんに告白しようとする女子高生澄田が主人公。貴樹くんから何かを感じ取って結局告白することはできませんでした、っていう話なんだけど、その描き方が凄い。セリフにない心の内を表情でもなく、アニメでありながら間と風景で表現し切った繊細さ。わずか10分ちょっとのなかでこれだけのものを表現するって普通じゃない。新海誠作品観るとき必ずこの話が頭に浮かんでしまうんだよなぁ。
《一貫したテーマ》
新海誠作品で一貫して描かれているテーマは、『人と人との距離感』・『時の移り変わりと人の心』である。
『秒速5センチメートル』は恐らく(勝手な予想だけど)監督自身の経験から切り取られた部分があるんじゃないだろうか。どれだけ強い想いも距離や時間が変えてしまう。誰しも考えてしまうことで寂しく感じるものだけど、実際どうしようもないもの。それを『秒速5センチメートル』のラストシーンであまりに美しく描いたもんだから脳裏に焼き付いてしまって離れない。
『空のむこう、約束の場所』や『星を追う子ども』はこのテーマが色濃く出ている。
自分は作者が表現したい強い想いとかが伝わってくる作品が好きだから、そのために必要ならバッドエンドだったり、報われない結末だとしても良いと思ってる。だからこの人の作品特有の見終わった後のなんとも言えない感じたまらなく好き。たとえ周りから「こじらせ」てるとかいわれてもww
その点で言うと、『君の名は。』で初めて、監督は観客の望むものを意識したのかな?と思う。『天気の子』も同様。『君の名は。』のラストシーンは間違いなく万人が望むエンディングだし、映画作りとしても満点!そこから評価されたから『天気の子』では予算かけてCGもふんだんに使われた綺麗な絵も作ってるし。
ただ、ねぇ。...やっぱり自分は良く出来過ぎてると思ってしまうんだよね...。
我ながら我儘だわ。
この監督には、いつかもう一度純粋に自分の頭の中だけで周りを一切考えずに映画作って欲しいなぁと思う、